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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2009年05月30日14時38分掲載
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文化
ジェーン『自由の扉−今日から思いっきり生きていこう−』 世界中の傷つき苦しむ性犯罪被害者へのメッセージ
7年前の2002年4月、神奈川県内の駐車場の車中で一人の女性がレイプされた。犯人は米空母キティーホーク所属の米兵、被害者はオーストラリアの女性だった。彼女への加害はなおも続く。駆け込んだ警察署でセカンドレイプに遭うのだ。男性警官によって、受診もできないまま傷ついた心身への配慮もなく、一晩中質問攻めにあう。さらに再現写真撮影という理由で、「レイプの格好がどんなものであったかをすべて教えろ」と迫られる。深刻なPTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥り、生きていくのがつらく、困難になったジェーンさん(仮名)がVictim(被害者)からSurviorとして再生していく心と行動の軌跡を手記と絵でつづった本書は、世界のすべての性犯罪被害者と戦争被害者へのメッセージである。本書は御茶の水書房から刊行され、6月初めに店頭に並ぶ。1600円+税。(大野和興)
とても変わっていて、不思議な、そして美しいつくりの本である。著者ジェーンさんの、心の奥の奥からつむぎだされる言葉。彼女が自ら描く絵が、その言葉によりいっそうの切実さと現実感を添える。カラー印刷の本書は、黒く重く沈む色づかいから始まる。それが次第に明るい色調に変化する。絶望から再生へ、まるで彼女の心の風景のように。それは、彼女と二人三脚で本書をつくりあげた編集者橋本育さんの、本書にかける思いをあらわしているようでもある。
著者は自らに問い詰める。なぜこんな理不尽なことが。そして彼女はたたかいに立ち上がる。ひとに語りかけ、裁判に訴え。米軍横須賀基地と横須賀警察署に被害届けを出すが、不起訴。しかし加害米兵を相手に提訴した東京地裁では勝訴。しかし犯人は本国に逃亡。現在、非人間的な捜査に対する損害賠償を求めて横須賀警察署を相手に最高裁で争っている。
彼女にとって徹底的な転機となったのは沖縄との出会いであった。2008年2月沖縄で中学生の少女が米兵に性暴力を受ける事件が発生した。彼女は集会の呼ばれた。集会の前日、彼女は彫刻家金城実さんの彫刻にふれる。彫刻に刻み付けられた沖縄の人びとの表情に出会い、彼女はその夜スピーチ原稿をすべて書き直す決心をする。
「一睡もしないで一行一行書いていくうちに、私の頬を涙が幾筋も流れました。日本語を確かめようにも、辞書をもってこなかったので、原稿は私の心から直接生まれたものでした。沖縄、沖縄……。考えつく限りのすべてを書こう、沖縄へ、沖縄へ。私の愛しい沖縄へ。どうしてそんなにひどくあなたを扱えるのか、あなたは何も悪くないのに。どうして米軍は沖縄人を、もう何十年もレイプし殺害し続けるのですか。なぜ私たちは戦争をするのでしょう。なぜ私たちは世界を平和にできないのでしょう。なぜひとびとは何も聞こうとしないのでしょう。なぜこのいまわしいレイプと殺人の数々をやめさせるために何もしないのでしょうか」
彼女は本書で、24時間体制のレイプ緊急支援センターの設立を軸とする性犯罪の防止と被害者の支援のための提言をまとめ、日本社会と日本政府に公開書簡を出している。日本にこの種の施設がひとつも存在しないことは想像もしていなかった、と彼女は書いている。彼女自身、被害者になって初めて気づいたことだ。オーストラリアにはたくさんの24時間体制のセンターが公的支援を受けて運営されているという。 そのセンターでは被害者は国籍、民族、言葉などによって一切差別されず、敬意を持って扱われ、プライバシーや自分の意見が尊重されなければならない、と彼女は強調する。
最後に彼女の提言を列記しておく。この提言にこめられた思いと意味を詳しく知りたい方は本書を読んでほしい。
1、24時間体制のレイプ緊急支援センターの設立 2、アメリカ軍人による日本における犯罪防止策と被害者のケア 3、児童性虐待者による子供への接近の禁止 4、性犯罪被害者の立場を理解するための警察官の研修 5、被害者パッシングをやめること−ジャーナリズムの責任− 6、性犯罪に理解について、社会全体に必要な教育と情報 7、裁判所での性犯罪被害者の権利の向上 8、性犯罪の再発防止の取り組みの推進 9、日本政府は、国連による日本人の人権改善のための勧告を受け入れること
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