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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2010年01月27日10時01分掲載
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中東
「イラク開戦は違法」−英外務省元法律顧問らが独立調査委員会で証言
2003年のイラク戦争開戦に関わる事情を検証する「イラク独立調査委員会」の公聴会が、昨年末から、英国で開かれている。26日、外務省の元法律顧問2人が証人として呼ばれ、イラクへの武力行使は「国際法違反」とする見方が法律チームの中で一致していた、と述べた。また、当時の外相が、開戦には新たな国連決議が必要とする助言を一蹴していたことも暴露した。開戦に抗議して辞職した元副主席法律顧問の女性は、武力行使を合法とした決断に至る過程は「嘆かわしい」と表現した。多くの英国民にとって、何年も間、心の中でくすぶってきた、イラク戦争の合法性に関する疑問が一気に解明されてゆく瞬間だった。(ロンドン26日=小林恭子)
―合法性に関わる疑問
イラクに数万人規模の派兵を行った英国民にとって、自分の息子たち、娘たちを送ったイラク戦争は忘れようとしても忘れられない出来事だ。特に気になるのは、はたしてあの戦争が国際法に照らし合わせて合法だったのかどうか、という点だ。
開戦前、イラクには大量破壊兵器があると政府は国民に対して繰り返し説いた。また、武力行使の理論的根拠は、イラクが武装解除義務の重大な不履行を続けていると判断し、さらなる情報開示と査察の全面受入れ求めた国連決議1441であると説明された。野党保守党が参戦合意をしたことで、ブレア英首相(当時)は議会から開戦へのお墨付きをもらい、2003年3月、英国は米国とともにイラクへの武力行使を開始した。
しかし、イラク戦争は本当に合法な戦争だったのだろうかー?イラクにあるとされた大量破壊兵器は見つからず、反戦者たちが唱える「違法」だったという声が、多くの英国民の心から消えない。もしイラク戦争が間違った戦争だったなら、イラクに派兵させた自分たちの息子や娘は一体、何をしたことになるのか?兵士の負傷は一体、何のためだったのかー?そんなもろもろの感情がいまだ渦巻く。
昨年夏、委員長の名前をとって「チルコット独立調査委員会」とも呼ばれる、イラク戦争に関わる政治過程を吟味する委員会が発足した背景には、国民の中にある、イラク戦争に関わる疑問を解き明かしてほしいという強い思いがあった。
イラク戦争に関わる調査委員会は、これ以前には、国防省の元顧問の死を巡る事情を調査したハットン委員会や諜報情報を精査したバトラー委員会などがあるが、いまだに、戦争の合法性に関する結論ははっきりしていない。(ちなみに、今月12日、オランダでは、同国政府のイラク戦争参戦問題を巡る独立調査委員会の報告書が、イラク戦争の適法性は不十分とする結論を出している。)
チルコット委員会では、開戦までの過程に関わった政治家、官僚、軍事関係者などを公聴会に呼び、事情を聞いてきた。
公聴会では「嘘をつかない」などの宣誓はなく、委員からの質問に答えるだけ。後で発言に間違いがあったとしても、法的責任は取らされないー。こんな「話を聞く」だけの委員会では、どうせ何も深いことは聞き出せないし、今まで出なかったような事実も出ないだろうー多くの人がそう思った。
しかし、昨年の11月から始まった公聴会の中でも、今年1月26日の元外務省法律顧問のトップ二人の証言は、多くの英国民が聞きたがっていた「あること」を明確にしてくれた。二人は、イラク戦争開戦は「国際法上、違法だ」と明言したのだ。そして、ある閣僚が、武力行使は違法になるという助言を無視していたことも明るみに出した。
―元英外務省法律顧問トップの証言
この日午前中、委員会のメンバーに向かい合ったのは、イラク戦争開戦前夜、外務省の首席法律顧問だったマイケル・ウッド氏である。
2003年1月、ウッド氏はストロー外相(当時)にこう書いた。「国連決議1441は、2002年11月、フセイン・イラク大統領(当時)に対し、核兵器施設の査察に応じるよう最後の機会を与えましたが、これを考慮しても、既存の安保理決議だけでは、合法にイラクに武力行使を行えません」「国連安保理決議に基づかない武力の行使は侵害罪になるでしょう」。
ストロー氏の答えは、ウッド氏の主張は「聞いたが」、「これを受け入れない」だった。外相は同氏が「独善的な考えをしている」「国際法はかなりあいまいなものだ」と一蹴したという。また、「政治上の理由から」新たな決議を出せるよう努力するが、既存の決議に軍事行動を正当化する十分な下地がある、と述べた。
最終的な司法判断は、政府に重大な司法問題に関して助言を与える役目を持つ法務長官が出した。当時の法務長官ゴールドスミス氏は、2003年3月上旬、新たな国連決議なしのイラクへの武力行使は違法だと考えていたが、同月17日には、武力攻撃は合法とする判断を示した。突然の心変わりの理由は分かっていないが、政府からの圧力に屈したという見方もある。
―ウイルムスハースト氏の証言
午後、証言をしたのは、2002年から2003年にかけて外務省の元副主席法律顧問だったエリザベス・ウイルムスハースト氏だ。先のウッド氏は当時の直属の上司となる。ウイルムスハースト氏は、イラク開戦の直前、外務省を辞職している。現在は、シンクタンクの王立国際問題研究所(通称「チャタムハウス」)のフェローだ。
開戦前夜、イラクへの武力行使は新たな国連決議なしには国際法に違反するというのが法律顧問チームの一致した見方だったが、その根拠は、他の国に対する武力行使を禁止する国連憲章だという。武力行使が合法になるのは、第1に自衛のため、第2には国連安保理の決議があること、第3には武力行使をしなければ、人道上のカタストロフィーが起きる場合である。
法律顧問チームは「イラクの場合は、これのどれにもあてはまらなかった」と判断した。
外務省の法律顧問とは異なる見方をしたのが法務長官だ。2003年3月7日の書簡の中で、同長官は、決議1441が決議678を「再起動」させるとする解釈を示した。
決議678とは、カナダ、フランス、ルーマニア、旧ソ連、米英によって提案され、イラクのクウェート侵攻に対してクウェートからの無条件撤退を求めるとともに撤退期限を設定した決議だ。イラクが拒否した場合には国連加盟国に対して武力行使を容認するものでもあった。
ウイルムスハースト氏は、「イラクへの侵攻は違法だと思ったので、仕事を続けることができなくなった」と語る。もし慰留していれば、「国際社会で政府の立場を支援」しなければならず、これは本意に反することだった。
「集団安全保障は国連憲章の主要な目的だ。この憲章に反する行為を、私が見るところでは政府がやっている」。国際法を順守し、「国連に深くかかわる国家としての英国の評判に重大な損害を招く結果となるだろうと思った」。政府が武力行使を合法とした決断に至る過程は、「嘆かわしいものだった」。
ウイルムスハースト氏が証言を終わると、後ろの座席で聞いていた聴衆から拍手が起きた。
ゴールドスミス元法務長官は、27日、公聴会に証人として呼ばれる。どのような受け答えをするのか、注目が集まる。2003年3月上旬には「第2の決議が必要」とした判断をしたものの、そのほぼ10日後には「今のままでも武力行使は合法」と判断を変えたのはなぜなのか?委員会の調査は佳境に入った。
29日には、ブレア元首相が公聴会に証人として出る予定となっている。イラク戦争で負傷した元兵士たち、あるいは息子や娘を亡くした親たちは、特に強い関心を持って、ブレア氏の登場を待っている。
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イラク独立調査委員会のロゴ
元外務省の法律アドバイザー、エリザベス・ウイリアムスハーストさん(BBCウェブサイトより)
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