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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2011年05月30日01時26分掲載
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核・原子力
放射能と健康被害の基礎知識 2
【4】 外部被ばくと内部被ばく
それぞれの放射線は、どのように人体に影響を与えるのでしょうか。人類の歴史の中で、最も深刻な被害をもたらした放射線被ばくは広島と長崎の原爆です。爆発の際に放射線障害で亡くなったり大きな障害をもたらしたりしたのはエネルギーの高いガンマ線や中性子線で、人の体を突き抜けながら細胞を破壊しました。体の外からやってくる放射線による被ばくです。放射線被害はこの「外部被ばく」が重視されてきました。
ところが、被爆者治療の研究の中で「内部被ばく」の危険性が明らかになってきました。アルファ線、ベータ線は遠くまでは飛びませんし、普通、衣服などを貫通して体に直接影響を与えることはありません。しかし、空気中で粉塵になっている放射性物質を吸い込んだり、汚染されたものを飲んだり食べたりすれば体の中に入り込み、体内で放射線を出します。特にアルファ線はその強い電離作用が体に直接働くことになるので影響は大きくなります。 原爆の場合はアルファ線による内部被ばくもありましたが、原発事故の場合、放出されているほとんどの放射性物質がベータ線を出すため、ベータ線による内部被ばくが問題になります。
被ばくを測る単位は「シーベルト(Sv)」で「実効線量」と言います。一時間あたりの被ばくを「線量率」と言い「シーベルト毎時」で表します。ある一定期間に受けた被ばくの総量を「累積線量」と言い、この線量率と累積線量の2つがそれぞれ問題になります。 また、そこにどれだけの放射性物質が存在するかを測る単位が「ベクレル(Bq)」で「放射能濃度」と呼ばれます。放射性の原子1つが別の原子に変わるのを1ベクレルとして表します。 外部被ばくは大気中に飛んでいる放射線の数を直接測り、放射線の種類を考慮して「実効線量」を計算します(※7)。 内部被ばくは直接計れない(※8)ので、人体に取り込んだ「放射能濃度」からその放射性物質の性質と、経口摂取か吸引摂取かを考慮して実効線量を計算します(※9)。
※7 同じシーベルト(Sv)で表しますが、外部被ばくの場合は人体の個別の臓器による被ばくの影響を考慮しない場合が多いので、その時には正確には「実効線量」でなく「等価線量」と呼びます。
※8 ホールボディーカウンターという機械で人体から出るガンマ線だけなら計測することは可能です。
※9 外部被ばくも、放射性物質の種類と放射能濃度と人体からの距離の3つが判れば、実効線量を計算することは出来ます。
【5】 確定的影響と確率的影響
放射線による人体の健康被害には2種類のタイプのものがあります。一つは「確定的影響」による「急性期障害」を引き起こすものです。これは高い線量の放射線を短期間に浴びて起こる障害です。被ばく直後から遅くても数週間程度で発症します。このタイプの障害には、白血球の現象や熱傷、脱毛、嘔吐などがあります。線量に比例して症状が重くなり「確定的」に影響が出ます。 1954年の第五福竜丸事件の久保山さんや1999年の東海村JCO臨界事故の2人の作業員は急性期障害で亡くなりました。
もう一つは「確率的影響」による「晩発性障害」を引き起こすものです。これは低い線量でも起こりうる障害です。被ばくから数年あるいは数十年後にも発症します。このタイプの障害には、白血病や癌があります。線量に比例して障害の発生率が高くなります。必ずしも障害が発生するとは決まっていないので「確率的」影響と呼ばれます。 原爆被爆者は戦後何年も何十年も経ってから癌や白血病を発症しましたし、チェルノブイリでは数年後から小児甲状腺がんの発生率が高まりました。
急性期障害も晩発性障害も、外部被ばくと内部被ばくの双方を考える必要があります。福島原発事故では、長期間の外部被ばくの影響を主に考えて避難地域が指定されていますし、内部被ばくの影響を考えて牛乳や野菜の出荷停止や水道水の摂取制限が行なわれています。
【6】 被ばく線量と急性期障害
急性期障害には個人差はありますが、基本的に受けた放射線量によって症状が決まります。 1000Svを受ければ体中の細胞が破壊されて全員即死します。100Svでは中枢神経死などによって短期間で全員死亡します。広島の原爆の場合、爆心地で250Sv、爆心から500mで60Svを受けて、その範囲にいた人はほとんど即日死亡しています。10Svで胃腸死などの回復が困難な障害を発生し99%は死亡します。東海村JCOで亡くなった2人の作業員はそれぞれ16Sv、8Sv程度の被ばくでした。 4Sv程度で骨髄死が起こり、骨髄で作られる白血球や赤血球、血小板が出来なくなって50%が死亡します。JCOで助かった1人の作業員は、1.5〜4Svの被ばくでしたが骨髄移植で機能を回復し退院していています。1Svを越えると、嘔吐、下痢、脱毛、皮膚の紫斑などの症状が現れます。それ以下でも食欲低下、口内炎、倦怠感などの症状が出ます。こうした症状は0.25Sv以下では現れないと報告されています。これを「しきい値」と言います。
原発事故の被害で、こうした急性期障害の可能性を考慮しなければならないのは、原発で働く労働者だけです。チェルノブイリの様な原発の暴走による爆発でも、急性期障害を起こしたのは収束に向けて努力を続けた原発や消防などの労働者だけです。地域住民の急性期障害は確認されていません。 今回の事故で環境に漏れた放射能について、枝野官房長官などが「ただちに健康への影響はない」と繰り返すのはそういう意味です。
立山勝憲 日本電波ニュース社 プロデューサー
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