⑧仕上げ
撮影後少しの休みを経て、スタッフは再びエネルギーを取り戻し、さらに客観性をもって、仕上げ作業が始まった。
「撮影後、少し時間を置いたものの、早く編集に取り掛からなくてはなりませんでした。編集者のピエールは一人で始終働いていました。彼はストーリーに対する独自の感覚を持ち込み、リズムの感覚も携えて編集室に入ったのです。そんな彼は「熊」と呼ばれています。映像を詰めたり、延ばしたり、ショットや会話やシーンを縮めたりしていました。編集のテンポとリズムを作り出そうと試みるわけです。仕上げのもう一つが音の編集です。
音の編集は夏にたっぷり時間をかけて行いました。撮影に来た録音技師と一緒に仕事をしたのです。次にスタジオの音声技師と音のミックスを行いました。彼にはミュージカルの文化を持っており、ロケの音声にさらに音を足そうとしました。その上、彼は正確に効果音を付け加えていきました。ミキシングの途中で大きな視聴覚室へ行ってその結果を体感しながら仕上げていきました。
一番時間がかかったのは名前のクレジットです。そこにはアニメーションが入ります。その音楽は映像を見たうえで、作曲家のジャン=ルイが作曲してくれました。アニメーションでは若いクリエイターのロザリーが活躍してくれました。同時に美術監督のヴィルジニーも随分協力してくれました。タイトルの映像が映画の実写部分の美的感覚とマッチするように配慮してくれたのです。この分野はフランスではあまり力を入れていないところです」(ノエル)
2012年1月に仕上げを終えて、ついに映画は完成した。撮影から9か月後に「不測の事態」は素敵な赤ちゃんとして世に出ることになった。スタッフはみんな誇りに感じている。
⑨上映
関係者への試写は感極まるときだったし、再会の時もでもあったわ。
「試写は2012年2月20日に行われた。上映の後、資金を支援してくれた人やそのほか様々な支援をしてくれた人たちにカクテルをふるまいました。彼らなしには映画は生まれなかったのですから。試写では以前監督した「大急ぎ」(Precipitevolissimevolmente)も上映しました。また「zazouira」という合唱グループが歌を歌ってくれました。このグループの創始者がクレジットタイトルの音楽を提供してくれました。
ともに働いたスタッフたちはこの日を待ちわびていました。思い出はつきることはありませんでした。映画作りは虚構の創作でもありますが、同時に多くの人々が分かち合う物語でもあります。はかない数十分の映像に過ぎませんが、時には永遠に心に残るものでもあります。」(ノエル)
映画を作ろうと言う欲求と寛大さとエネルギーがついに1本の映画を生み出したのだ。窮地を脱しようとする人間を描くこの短編映画、今後も続編が作られ、フェスティバルで上映され、テレビで放映されるだろう。
「不測の事態」(Contretemps)予告編
http://www.youtube.com/watch?v=QVsDND0faqE
寄稿:ヴィルジニー・ブリエン(Virginie Brien) 翻訳:村上良太
*短編映画「大急ぎ」(PRECIPITEVOLISSIMEVOLMENTE)
http://www.epiceriefilms.fr/frproduction.html この情報によれば映画は3分で、パティシエの焼けた家を使って撮影された短編映画。パティシエは息子のルビンと出演している。焼け跡に出没する彼らは生きているのか、死者の霊か、それとも・・・という内容だと紹介されている。監督はローラン・ノエル。
■パリジェンヌの日記(Le journal d'une Parisienne)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201210022159022
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