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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2013年08月03日14時11分掲載
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文化
【核を詠う】(番外編)本連載筆者の原発・原爆詠 「文明と言へど原子力の冠をつければにはかに世は暗くなる」 山﨑芳彦
今回は、この連載の筆者である私の拙い原発詠を記させていただく。昨年10月30日に「番外編」としてまことに拙いと承知しながらも、詠うものの一人としてこの連載のなかに掲載させていただいたが、それに続く拙作、昨年8月以降に作歌した一部を掲出させていただくことにした。声調ととのわず、表現の齟齬の多いことを自覚しているが、現在の筆者の詠う力量であるから恥とするのではなく、さらなる鍛錬をわが身に課してのことである。脱原子力社会に向かっての、多くの人びととの共同・連帯の取り組みのなかで、詠うものとしての力を蓄えていきたいと思う。
福島第一原発の壊滅的な事故から早くも2年半近くが経過した。「早くも」というより、「まだ2年半」と言わなければならないのかも知れない。
「早くも」というのは、あの原発事故による被災に対する政府、東京電力をはじめとする責任を負うべき者たちが、なすべきことをなさず、なにが起きたのか、そしていまどのようなことが起きているのか、これからどうなるのか・・・について、まったくといっていいほど明らかにしないままに、そして事故の責任が問われず、したがってなすべき対応、対策が極めて不当かつ不十分にしか為されないままに2年半が経過してしまった。その結果が被災者の生活、健康、人として生きる上で欠かせない諸条件が破壊されたまま、回復される基盤が極めて脆弱な状態にされ続けている。
さらに、「福島の原発事故から2年経っても、日本における原子力エネルギーの将来についての決定が、まだ為されていないのは、驚くべきことです。」(ミランダ・シュラーズ ベルリン自由大学教授、ドイツ連邦政府に設置された「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」の委員を務めた。)といわれるように、原発問題について、脱原発の方針も決められないまま、その反対に原発再稼働、海外への輸出が早くも促進されつつあるのである。
「まだ2年半」というのは、原発事故、核放射能の拡散、事故を起こした福島原発が現在どのような状態にあるのか、これから何が起こるのかもわからない現状、いま大きな問題になっている放射能汚染水の危機的な状況。福島のみならず全国各地にある原発が大量の核燃料、あるいは使用済み核燃料、核廃棄物を抱え、地震や津波だけではない、予想ができない危険に見舞われるかもしれず、これからどのようになるのかが何もわかっていないのが現状だということである。「まだ2年半」、これからなにが起きるのか。
行く先も処分の方法もない使用済み核燃料や核廃棄物、汚染物質。現在、将来、未来にわたって人間だけでなく自然環境のすべてに関る破滅的な状態をひき起こしかねない原因の蓄積を続けようとしているのが、原子力エネルギー依存社会の継続である。
いずれにしても、この国の現政府も大企業・財界、電力大企業をはじめ、原子力エネルギーを企業の利益創出の資源として、原子力エネルギー依存の体制を維持し、海外への輸出を企み、福島の教訓から何も学ぼうとしないどころか、核エネルギー保持に賭ける情熱は、その裏側に「核兵器をいつでも持てる基盤の保持」も含めて、冷めることはないと見なければならない。 これに対して、先の参議院議員選挙では、さまざまな一面的ではない要因はあるにしても、安倍政権を「信任」するかのような結果となった。もとより、この選挙結果が原子力問題をはじめ憲法やTTP、その他諸重要問題について安倍自民党政権を支持するものとはいえないが、現実のこの国の政治・行政の仕組みを考えれば、やはり楽観的でいるわけにはいかない。
ここで大切なことは、やはり選挙の一票にとどまらない「国民主権」を生き生きとよみがえらせ、「力」としてさまざまに現すことであると思う。 残念な、というより当然に、この国のさまざまな政党に、現状では私たちの思いを全面的に託すことができない。ともに共同し、協力しようという政策を打ち出している政党や政治家がないわけではないが、どの党かに依拠することで政治の現状を大きく変えることができると思うのには無理がある。
原子力問題について考えれば、脱原発を政策として提示している政党、政治家は少なくない。また諸調査でも原発をなくすべきだとする人々の意向も多数である。そうであれば、このことを大きな力として、具体的に脱原発を明確に目指す運動をさまざまな方法で進め、政治の力としてまとめられる、例えば「脱原発法」の制定をめざす力、勢力の結集に取り組むことがあってもいいのではないか、そのためにいま必要なことは何か、大きな課題であろう。
7月19日に出版された『ドイツ脱原発倫理委員会報告』(原題『ドイツのエネルギー大転換―未来のための共同事業』)の全日本語訳(翻訳 吉田和文、ミランダ・シュラーズ 大月書店刊)を読んだ。大変示唆に富む、学ぶべき内容だと思っている。多くの人が読まれたかと思うが、機会を見つけて内容を紹介したいと考えている。
◇2012年8月~12月◇
▼国会を囲むひとりとして立ちぬ「さようなら原発」あせもぬぐはず
ヒロシマとフクシマをつなぐ医師らあり「被爆二世の医師の会」生れたり
八月のヒロシマの暑き夜なりき原爆孤老の被爆二十年を聞きしは
福島の原発事故を聞きてすぐ広島・長崎を吾は思ひたり
文明と言へど原子力の冠をつければにはかに世は暗くなる
学ぶべし高木仁三郎の説きしこと原子力文明の超克への道
大震災復興の名のもと原発の輸出促進に五億円(ごおく)計上とは
原発を輸出せむとや政財界よフクシマの事故はなかつたことか
原発が経済成長豊かさを支ふるといふ嘘この十年を見よ
原発の稼働せし時も不況なりき格差拡大貧困化すすみたり
原発の事故の被災者をさておきて原発列島再稼働の政治
原発の被災者の日々詠ひたる歌など知らず原発亡者らは
さかしまを向きゆく時代(とき)か来る年も反原子力唱へてゆかむ
かへりみてなしたるはなに 除夜の鐘ひびける空に星の流れつ
◇2,013年1月~7月◇
▼汝にいのち草木にもあると言ひしかば孫の問ひたり「石にもあるの?」 幼孫に原発を語りながら
原発の電気注文なさざるに買ひていたのだ うかつなりしよ
この灯さへ原発のゆゑといはれても信じてしまふな それは嘘だぞ
冬の夜の凍てる庭にて揺るるわれ原発列島のきしむ音聞く
『現代万葉集』の原発詠抄(ひ)きてをるときに佐藤祐禎さんの訃報ありたり
原発避難の満二年耐へて詠ひ来し祐禎さん逝く 原発にくし
祐禎さん逝きしとメールの届きたり原発禍二年のああ酷き日々
『青白き光』探して国会図書館より借りて筆写せし日々を想ひぬ 佐藤祐禎歌集
祐禎さんが「いつ爆ぜむ」と詠ひしは平成十四年なりき 大熊町に住みき
脱原発せぬと言ひつつ福島の復興語ればことば踊るのみ 3・11の首相挨拶
原発がなければ江戸の世にもどると詠ふ歌人のあはれなる嘘
原発に愛をささやく歌人(ひと)ありて放射能苦を嘲笑(わら)ふうた作(な)す
その父を「原子」と呼べる「原子の子」の原発賛歌を連ぬる集あり
無慚なる歌多くしてやうやくに読みてしばしを怒りにまみれぬ 岩井謙一歌集『原子(アトム)の子』
懸命の田畑除染のあかしにて黒き袋の数限りなし 福島県田村市の農業地区を行く
農作物ベクレル検査にて「安全」を保証されしも「安心」ならずとふ 福島県三春町にて
「私らはもう年だから」といふ農婦の子孫(こまご)を憂ふることばの続く 福島・三春ベクレルセンター
三年目に田植の許可はありたれど「作付面積は三割ぐらい」との声 福島・田村市都路地区にて
非日常を日常となす母と子の語るひびき聞く『トリサンナイタ』 大口玲子歌集『トリサンナイタ』
六月の細雨に濡るるあぢさゐに見えてしまひたり放射能の翳
夜深き月なき森の沼底に放射能に死する人沈むとふ怪談
ヘリコプターの音ひとめぐり暗き沼に怪しきコンクリ塊落とされたると 原発立地某所のうわさ話
まだ二年 核放射能の果て知らぬ災い続くらむ百年千年・・・
福島の森のけものらの夜々に月は「青白き光」降らしをり
福島原発の放射能汚染水のおそろしく地にも海にも限りもあらず
原発死を数ふることもないままに一人も死なずと言ふ政治家の嘘
原発ゼロを夢物語と言ふならば核放射能禍は何物語なるや
脱原発決められずしての規制基準 安全神話の改訂版になる
核の毒が天地汚し来しは八十年か思へばすでに地球危ふし
原発のセールスマンが政権を担ふこの国は怪しく不思議ぞ
読み返して、恥じ入るような短歌だが、恥じるのではなくさらに原子力問題、原発事故の真実、そこから受け止め感応したことを短歌表現することが出来るための勉強と実践を、わが身に課し、努めなければならないと痛感している。
次回からも、「核を詠う」短歌作品を読み、記録していきたい。(つづく)
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