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2013年10月23日11時41分掲載
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労働問題
労働者派遣法改悪とブラック企業特区に断固反対! 〜日弁連が12月13日(金)に日比谷野音で大集会」に結集を!〜
安倍政権が進める労働者派遣法の改悪と「国家戦略特区」を創設して雇用規制の緩和を導入しようとする動きに対抗しようと、日本労働弁護団は10月16日、東京・千代田区の連合会館で「労働者派遣の規制緩和とブラック企業特区に反対する集会」を開催した。 日本労働弁護団事務局長の佐々木亮弁護士が司会を務めた集会には、連合、全労連、全労協、中立系の労組関係者が集まり「安倍政権の雇用制度改革にNO!」での共闘を誓い合った。(坂本正義)
開会挨拶では、日本労働弁護団会長の鵜飼良昭弁護士が「安倍政権が行おうとしている労働分野の規制緩和の動きに対しては、今年の秋が正念場です」と語り、労働基準法や労働契約法の適用除外を行うことは憲法に違反するとして、政府の進める雇用ルールの破壊に対して断固として闘わなければならないと訴えた。
<官僚の説明は出鱈目!>
鵜飼会長の挨拶に続いて、日本労働弁護団幹事長の水口洋介弁護士と同常任幹事の棗一郎弁護士の2人が登壇し、まず初めに水口弁護士が、労働者派遣法改正案と国家戦略特区関連法案をめぐるこの間の政府の動きなどを報告した。 「昨日、民主党の政策調査会厚生労働部会に呼ばれました。部会には内閣官房から官僚が来ていて国家戦略特区の解雇ルールについて説明していました。その官僚は『解雇ルールというのは、ガイドラインや裁判判例を踏まえます。労働契約法第16条(解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする)を適用除外にするものではありません。労働契約法第16条を明確化して、誰にも分かり易い形にするというというものであり、解雇を緩和するということではありません。最終的には、裁判所がお決めになることで、それは今と変わりません』ということを平然と言っていました。雇用ルールのガイドラインに適合した労働契約条項というのは、労働契約法第16条を適用除外にする狙いであることは間違いありません。官僚の言っていることは、法律家の私から見れば全くの出鱈目です」
そして最後に水口幹事長は、 「今まで労働組合、労働者が闘いの中で築いてきた雇用ルールが全面的に破壊されようとしています」 と述べ、日本労働弁護団がすべての労働者、労働組合とともに政府の動きを阻止していくことを表明した。
<正社員ゼロを目指すものだ!>
政府の労働者派遣法改正案を解説した棗弁護士は、厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長が昨年10月に設置した「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」が今年8月20日に発表した報告書について、
「研究会の報告書は諸悪の根源と言っても良いものです。この報告書の発表を受けて審議を始めている労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会は、表向き『研究会の報告書を叩き台にして議論するわけではない』と言っていますが、安倍政権が研究会の報告書に基づいた改悪を狙っていることは目に見えています」
と指摘するとともに、安倍政権は労働者派遣の完全自由化を目指していると言っても過言ではないと指摘した。
「安倍政権が目指す労働者派遣法の改悪は、派遣先企業と派遣業界が労働者を使い易くする方向で改悪することに他ならず、これが実現すれば、日本の派遣労働のあり方は根本的に変わってしまいます。今まで労働者派遣法を支えていた基本的な主旨、つまり労働者派遣を常用雇用の代替とすることを防止するという労働者派遣法の根幹を変えるものです。連合は、今回の労働者派遣法の改正案を『正社員ゼロを目指すものだ』と言っていますが、今までの例外的、一時的な間接雇用のあり方を普通の働き方に変えてしまい、これをどんどん使っていきましょうという方向に向かわせるものです。1パーセントの正社員と99パーセントの非正規労働者という雇用社会を作り上げようという方向性に他なりません」
<労政審における議論の状況>
労働政策審議会で労働者代表委員を務めるUAゼンセン石黒生子副書記長は、労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会での議論の状況を報告した。
「労働者派遣法は、2012年に労働者保護の観点から改正されましたが、その際、衆参両院からの附帯決議があり、登録型派遣・製造業派遣のあり方、特定労働者派遣のあり方について、改正法施行後1年を目処に論点を整理した上で労働政策審議会で議論を開始すること、また期間制限のあり方について速やかに検討を開始することとされました。その附帯決議を受けて設置された「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」は、今年8月20日に報告書を発表しました」
「私が労働者代表委員を務める労働政策審議会の職業安定分科会労働力需給制度部会は、研究会の報告書を受けて今年8月末から審議を開始しており、10月までに4回の議論を終えています。事務局によれば、年内に部会の意見を取りまとめる方向です。私は、労働者保護の改悪を招くような見直しは絶対にしてはならないと思っていますし、常用代替の防止と派遣労働者の保護という2つの観点に立った、より良い労働者派遣法の見直しをするという強い決意を持って労政審に臨んでいるところです」
「労政審の議論とは別に、労使の代表がいなくて非公開である政府の規制改革会議(議長=岡素之・住友商事相談役)でも労働者派遣制度の見直し議論が行われまして、今年10月には提言案まで出しました。提言案には、日雇い派遣の原則禁止や労働契約申込みみなし制度といった労働者派遣法の2012年改正部分を廃止し、常用代替防止の見直しや期間制限の緩和を求めるなど、労働者派遣法の根本を揺るがすような意見が出ています。労政審が今年8月末から労働者派遣制度の見直し議論を粛々と開始しているにも関わらず、規制改革会議が提言案まで出してくることは不適当だと言わざるを得ません。労政審の労働者代表委員は再三申し上げていますが、労働者派遣法を含む雇用・労働に関わる事項は、ILOの三者構成主義に従って審議会で議論すべきであるということをまずもって申し上げたい」
「労働者派遣法の見直しに当たっての考え方ですが、労働者派遣に対する認識については次の3点があります。1点目は『雇用の不安定さ』、2点目は『処遇の低さと不安定さ』、3点目は『業界体質としてコンプライアンス(法令遵守)が欠如しがち』ということで、私たち労働者代表委員はこの3点を踏まえながら審議に臨んでいるところです。そして、研究会の報告書には多くの問題があることから、審議会では研究会報告を議論の前提にしないとしていますし、我々労働者代表委員としては、労働者派遣法制定当時からの常用代替防止という考え方と、1999年の改正で正当化された派遣労働は臨時的、一時的な労働力需給制度だという考え方を堅持していきたいと思っています」
「現在は、派遣労働以外にも労働者を守ってきた様々なルールがなし崩しにされつつある状況でありますが、労働者の生活を破壊するような動きの中で労働者派遣法の改正が行われているということをきちっと認識した上で、労働者の権利を守る取り組みを進めるという観点に立って、今後も労政審での審議に参画していきたく思っています」
<連合、全労連、全労協、中立系労組代表によるリレートーク>
UAゼンセン石黒生子副書記長が、労働政策審議会での議論の状況を説明した後、集会に結集した連合、全労連、全労協、中立系労組の代表がリレートークを行った。
「国家戦略特区が、2020年の東京オリンピック開催でいけいけどんどんになっている東京に適用されれば、規制があったことにより保たれていた経営者の倫理観念が失われかねないのではないでしょうか。そうすると、我々やご利用いただくお客様の安全安心が失われていくのではないかと危惧しています」(私鉄総連・衣幡義男企画調査局長)
「労働者派遣法改悪について、8月20日に出された『今後の労働者派遣制度のあり方に対する研究会』報告書における大幅な規制緩和を目指す内容は、民主党政権下の2012年に派遣労働者保護の観点で行われた法改正を覆すものであり、大変遺憾です。また、政府の産業競争力会議『国家戦略特区ワーキンググループ』座長の八田達夫氏(大阪大学招聘教授)の資料は、5年超えの無期転換権の放棄であったり、解雇権乱用の解禁、労働時間ルールの適用除外など、憲法を始めとして労働法を知る者から見れば大変呆れるような内容になっています。特定地域に限定してこうしたことを認めると、不当な解雇、過労死が深刻化することは必至です。法を無視し、非人道的な働かせ方で利益を貪り、のさばってきたいわゆるブラック企業の温床になりかねません」(JAM・川野英樹副書記長)
「現在の安倍政権は、日本経済あるいは雇用について、企業が儲かれば富める者が儲かり、そのおこぼれが弱い者に渡るというトリクルダウン理論ですべてが解決するという発想で物事を進めていると思います」 「自治労にはハローワーク、労働委員会、労政事務所など労働行政分野に勤務する組合員も多いことから、行政の立場から話をさせてもらいますと、仮に特区というエリアを区切った導入だとしても、新たに特区内で子会社を設立する、あるいは官公庁等への事業者登録を特区内だけに限定するなどの脱法的な悪用により、ブラック企業特区が事実上全国に波及していくことは火を見るよりも明らかです。企業利益優先の立場から、特区という耳障りの良い方法で雇用規制の緩和を一部の労働者、企業に限定することを装いながら、それを足掛かりに最終的には雇用規制緩和を全国展開し、すべての労働者、生活者を無権利状態に置くことを狙うものに他なりません」(自治労・森本正宏労働条件局長)
「今日は新聞業界の経営者の方々が鹿児島に集まって新聞の未来について語っているようです(日本新聞協会主催第66回新聞大会)。彼らが考えていることは、新聞がもう売れないことを前提に、人件費をひたすら削って1年でも持たしていこうということです。そのために労働者を非正規化したり、派遣労働者を多用したり、子会社をどんどん設立して仕事を外注化しています。社員の多くを非正規労働者にした子会社では、親会社から出向してきた新聞記者上がりの偉そうな奴が、非正規の社員の首をすぐ切ったりしているのです。私の出身である京都新聞は、印刷部門、発送部門、営業部門、販売部門、事務部門などを全部別会社化し、京都新聞本社を記者会社にしていますが、別会社では雇い止めを乱発しています。こういうことが拡大していって、健全なジャーナリズムが保てるのか、社会の木鐸として存在を示せるのかということを新聞労連は常に問うているところです」(新聞労連・日比野敏陽委員長)
「こういう法改正が行われるときは、必ずといって良いほど現場で先取り的な攻撃が行われるように思います。日本IBMが昨年からの1年間で、JMIU日本IBM支部組合員26人に対し、就業規則上の成績不良という理由だけでロックアウト解雇の通告を行っています。これは正に労働組合狙い撃ちの解雇攻撃です。安倍政権が狙っている解雇自由の社会が強行されるならば、真っ先に狙い撃ちされるのは闘う労働組合だということが、日本IBMのロックアウト解雇事案で示されたと思います」(JMIU・三木陵一書記長)
「労働者派遣法の改悪は、差別の温存・拡大を行うものです。そしてブラック企業特区は、労働者の奴隷化を促進するものです。このような策動は、労働者あっての企業という概念を放棄するものです。企業がどんなに儲かっても、その企業で働く労働者にはその利潤が全く還元されないことが、私たちの経験してきた闘いや歴史が証明しています。私たち労働組合や労働者自身が立ち上がれば、こうした策動を粉砕できると確信しています」(全国一般東京東部労組・菅野存委員長)
「派遣ユニオンには、日々派遣で働く非正規雇用労働者の方々から相談が寄せられています。その中でも『長期の約束で働き始めたのに、契約の更新を拒絶されてしまった』といった相談が非常に多いです」 「NPO法人・派遣労働ネットワークが1994年から2、3年に1度のペースで実施している『派遣スタッフアンケート』の今年の集計結果(有効回答537人)によると、派遣労働者の賃金水準は毎年下がり続けています。また、アンケートに答えた6割以上の方が『できれば正社員で働きたい』と答えていました。しかし、正社員として安定して働きたくても、正社員型での募集が無いために派遣型での労働を余儀なくされている人が増えているのが現状です」 「今回の労働者派遣法改悪の方向性は、今までの26業務といった専門業務という区分けをすべて無くして、無期契約の派遣と有期契約の派遣に分けてしまうものですが、無期契約の派遣というのは企業側にメリットがありませんし、これまでもほんの1部しかありませんでしたから、今後、無期契約の派遣が広がるとは考えられません。有期契約の派遣は、すべての業務において3年という期間制限を設ける、つまり派遣労働者を3年以内に切り替えさえすれば、企業はずっと派遣契約を活用し続けることが出来ることになってしまうものですが、これによって常用代替防止という原則が完全に崩れ去ってしまうでしょう。期間の定めのない雇用契約を原則とするような派遣制度に切り替えて行くべきです」(派遣ユニオン・関根秀一郎書記長)
<12月13日の集会に結集を!>
日本労働弁護団副会長の徳住堅治弁護士は、閉会挨拶の中で、 「今日の集会で、労働者派遣自由化法とブラック企業特区設置法が、これまでの雇用ルールを破壊して労働者の生活、職場における労使関係のモラル、倫理感などを破壊する恐ろしさをご理解いただけたと思います。私は弁護士になってから40年間、日本労働弁護団本部で労働法改悪阻止闘争に関わってきましたが、これほど悪質性を持った法案は経験が無いくらいだと思っています。しかし、こうした法案があれよあれよという間に通ってしまう情勢になってしまいました。私たちは両法案の成立阻止のために全力を尽くす必要があります。そしてアベノミクスの政策を粉砕する必要があります。今日の集会に出席された皆さん方が、職場で先頭に立って労働者、市民にこの恐ろしさを広く訴えていただき、法案成立阻止のために是非頑張ってもらいたい」 と語り、日本弁護士連合会が12月13日(金)に東京・千代田区の日比谷野外大音楽堂で開催する「安倍政権による雇用破壊に反対する大集会」に結集するよう協力を呼び掛けた。
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日本労働弁護団集会





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