・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・市民活動
・国際
・核・原子力
・みる・よむ・きく
・農と食
・アジア
・反戦・平和
・入管
・欧州
・中国
・イスラエル/パレスチナ
・文化
・市民活動告知板
・人権/反差別/司法
・教育
・沖縄/日米安保
・難民
・医療/健康
・環境
・中東
・スポーツ
提携・契約メディア
・AIニュース
・司法
・マニラ新聞
・TUP速報
・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus
・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2024年10月12日
・2024年10月11日
・2024年10月10日
・2024年10月07日
・2024年10月06日
・2024年10月05日
・2024年10月04日
・2024年10月03日
・2024年10月02日
・2024年10月01日
|
|
2014年05月14日10時02分掲載
無料記事
印刷用
核・原子力
『美味しんぼ』─鼻血論争 落合栄一郎
コミック「美味しんぼ」で、主人公が福島を訪れて、鼻血を出し、双葉町の元町長さんの経験や、被爆を専門にしている人物との対話なども交えて、放射能と鼻血の関連性を示唆して、物議を醸している。地元の双葉町現町長の反論(鼻血を出す人が多いという事実を否定)、環境大臣の発言までも登場している。
福島事故から3年余、放射線の健康への影響の公式調査は、福島県の子供達の間の甲状腺異常についてのみである。しかし、様々なサイトで、鼻血を含め、様々な障害が観察・報告されている。脱毛、紫斑、過度の疲労など、心不全などの増加傾向その他などである。その他には、家畜の異常、死亡した家畜の体内でのセシウム濃度の特定臓器への濃縮などなど、学術研究も含めて様々な報告がある。 しかし、現象の性格上、健康障害と放射能との因果関係を科学的に立証する事は容易ではない。そのため、放射能の危険性をなるべく過小評価し、それを市民に納得させたい側は、科学的に立証されていない──だから問題はないと強弁する。科学的に有為な因果関係が今のところ立証されていないことは、しかし、因果関係を否定するわけではない。
さて、鼻血であるが、鼻血の原因は多数あるし、鼻血を出し易い体質、そうでない体質様々な理由で、放射線との因果関係を確立するのは、とくに困難である。現在、論争されている点は、先ず放射線防護専門家などによる「頭からの否定」がある。その根拠の一つは、広島・長崎の原爆からのデータ(といっても鼻血に関するデータはほとんどない──そういう現象がなかったのではなく、データをとってなかったにすぎない──肥田医師は、鼻血を頻繁に目撃していた)である。これは、死の灰の微小粒子などが、呼吸によって、鼻など付着する可能性などは、考慮されていない。 もう一つの根拠は、チェルノブイリ事故後に当時のソ連政府が「放射能恐怖に基づくストレスが主たる原因」であるという、放射線の生理作用を否定する考えである。これは、当時の政府が事故の責任回避のために発明したいいわけである。ストレスがどのような機序で、健康障害を起こすかなどについての説明は一切ない。それを、今回も、日本の「専門家」が持ち出している。
こうした確たる否定を専門家がおっしゃるのだから、問題はないと市民に印象づけることが狙いである。このレベルの否定は、科学的にはすでに充分に論破されているのだが、それは、こうした問題を充分に深く考え、学ぶ努力をしていなければ、論破できない。なお、筆者は、「ストレスによる障害」が全然ないなどと、全否定しているわけではない。
もうすこし、より科学的と考える人達による、否定的な論評は、やはり鼻血と放射能との因果関係が科学的に立証されていないという点である。それは、確かなのだが、逆の、「放射能とは無関係」という非因果関係も科学的に立証されているわけではない。というより、鼻血─放射線因果関係否定派が、この逆の非因果関係の立証例を提示しているわけではない。
さて、マンガは現実にある事象を報告しているに過ぎない。そして、ある専門家や、現場を深く経験した元町長の談を紹介している。こうした専門家も、科学的立証の困難さを充分に弁えている上に、因果関係の可能性の科学的根拠を提供している。この最後の点、因果関係の可能性の科学的根拠を広範なレベルで考察したのが、拙著『放射能と人体:細胞・分子レベルからみた放射線被爆』(講談社、ブルーバックス)である。こうした問題に興味のある方は是非お読みいただきたい。鼻血問題は、1つの例に過ぎず、さらに多くの深刻な問題があるので、鼻血問題に拘泥してはいないが。
今回のこの騒ぎは、実は、放射能の健康への深刻さをむしろ表明しているようなものである。それほど深刻でないならば、このように大げさに騒ぎ立てる必要はない。騒ぎ立てて、多くの市民に、否定的な意見のほうが、主流であり、放射能は安全と考えて差し支えないということを印象付けようとしているものと思われるが、市民の多くは賢明で、むしろ、逆の印象を受けるものと思われる。
なお、否定論の目玉の一つは、これが、「風評被害」を起こすから問題だという点のようです。先ずこの場合の「風評被害」はどのようなものがあるのでしょうか。鼻血が現実──放射能がまだかなり高い──福島県の農漁業産物が汚染されている──だから買わない──などということでしょうか。その上に、とんでもない考え方──被爆者から放射能症がうつる──もあるようです。もちろんこんな非科学的なことを信じる人も居るでしょうが、そういった人の再教育までは難しいでしょう。多くの人は、論理的な説明を受ければ、そのウソを見破ることは可能でしょう。 風評被害が、避けられないものという前提が全ての議論にあるようです。現実は残念ながら、それに近いのでしょうが、いつまでも、「風評被害」なるものの間違いを正す努力をしないのも、問題のように思います。そのためには、放射能の真実(鼻血ばかりでなく、全体像)を知る必要があるように思います。是非、先に上げました、拙著もご覧になって頂きたいと思います。自己宣伝で恐縮なのですが、是非、放射能問題の全体像をつかんでいただきたいのです。
|
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
|