共同通信によると、希望の党が<消費税増税の凍結を前面に打ち出したほか、「2030年までに原発ゼロ」を目指すとし、安倍政権との対立軸を鮮明にした>とのことだ。
https://this.kiji.is/288131330889385057?c=39550187727945729 だが、冷静に見ると、「2030年までに原発ゼロ」というのは公約でもなんでもなく、ただの「目標」であり、目標と言うものはどこまでも伸びていくものでは理論的には100年でも300年でも伸ばせるものなのである。そのことは日銀の黒田バズーカと2%の物価上昇を思い出してみればよい。原発ゼロというのは核汚染や被爆に対する深い理解や過去の原発縮小への取り組みが積み上げあって初めて打ち出せるものである。新聞勧誘員が配る洗剤みたいな感覚やリップサービスでは不可能だ。小池氏が環境大臣だった時代(2003年9月22日 - 2006年9月26日)に原発ゼロへの取り組みをしたことはあったのだろうか。小池氏のような核兵器容認の政治家と原発ゼロとは最も方向を異にするものである。そもそも福島原発事故の後、いち早く原発の「再稼働」を訴えていたのは小池氏ではなかったのだろうか。
自民党 小池百合子総務会長(2011年6月 当時) 「どういう手順でこれらの安全のことをクリアしてくださいという再稼働ロードマップ(行程表)というのをきちっと準備すべきではないでしょうか。」
この記者会見は福島原発事故からわずか3か月のことである。原発事故の恐怖のどん底に国民が陥っていた時に、このような発言を冷静にできたのは小池百合子氏に原子力発電への並々ならぬ政治的情熱があるからだ。小池氏とは対照的にドイツのメルケル首相は福島原発事故が起きてから一週間以内にドイツの原発政策を廃止する方針に踏み切った。 忘れてはならないのはこの夏まで小池氏は原発再稼働を推進してきた自民党の所属議員だったことだ。2011年の福島原発事故から6年間、原発ゼロに向けて何をしてきたのだろうか?それとも、この数週間の間に突然の回心でもあったのだろうか?
前原民進党を煙に巻いた小池百合子党首が率いる希望の党はこれまで原発ゼロと言ってみたり、急に取消しと報じられたり、とすでにぐらぐらした印象がある。もし小池氏が本当に原発ゼロを望んでいたら、もっと最初から(自民党時代から)一貫して押し出していただろう。エネルギー政策の転換にはそれくらいの強い意志が必要だ。したがって今回の選挙で自民=希望の極右2政党の連立政権の可能性を国民の目から隠すための細工だと考えてよいのではなかろうか。対立軸を鮮明に見せるための演出であり、放送産業で働いていた小池氏にはよくわかっていることだ。
いくら希望の党が「原発ゼロ」を選挙で掲げたとしても、安倍政権と希望の党が将来、連立与党を組むときに連立交渉の中で「原発ゼロ」は簡単に落とすことができるのである。投票してくれた有権者には北朝鮮問題で自民党と提携するためには「原発ゼロ」に今こだわっている場合ではない、と言って理解を求めることになるだろう。これは今では「前原方式」と言われている。むしろ、状況が変わったと言って、さらなる原発の再稼働と核開発の必要性を訴え始める可能性もある。だから、今回の「原発ゼロ」の公約は小池氏のリベラル派切り崩し作戦の第2ステージと言えるだろう。
※黒田日銀総裁「2%に向けたモメンタムは維持」 物価目標達成先送りでも楽観
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL20HSF_Q7A720C1000000/
金伏健太
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