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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2020年05月03日21時37分掲載
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憲法
≪コロナと憲法≫ 差別と貧困が弱者を襲う 大野和興
欧米や東アジアのコロナ抑え込み経験を観察しますと、最も効果があるのはどうやら「自由と権利を制限する」ことのようです。「自由と権利」という人類が積み上げてきた普遍的ともいえる価値を制限するには強権がいります。コロナの場合、それは国家権力として現れます。国家が強権をふるうに際して邪魔になるのは民主主義です。「自由と権利の制限」「国家による強権支配」「民主市議の抑圧」 この三点セットがそろったとき、「コロナとの戦争」に勝てる。
各国の指導者はコロナ対策を戦争に例えます。我が安倍首相も同じです。戦争放棄と市民的自由、人びとが等しく生きる権利をもつと定めている現行憲法を真っ向から否定したいという願望がにじみ出しています。
コロナとの「戦争」下にある日本でそれはどのように現れているか、具体的に考えてみます。コロナ対策法でいま日本は緊急事態宣言下にあります。しかい同法自体が「ソフトな強制」を目的としたものだから「自粛」を呼び掛けてもいうことを聞かない人も出てきます。パチンコ屋は開いているし、都会の若者は山や海や田舎に繰り出す。「あいつらなんとかしろ」という声が普通の市民から湧いてくる。そして今、安倍官邸と自民党は憲法審査会を開いて憲法に「緊急事態条項」をいれようと動き出しています。いざ緊急事態には国会の権限を停止し、自由と基本的人権を制限できることをめざした改憲です。
生存権との関連でいえば、コロナ対策が社会的にも経済的にも最も弱者に打撃を与えているという現実があります。密室空間除去の対策によってネットカフェが閉ざされ、そこの生活の根拠地にしていた大勢の人が路上に放り出されました。 人と人を切り離し接触を封じることが、いまのところ最も有効な手立てであるコロナ対策の最大の被害者は野宿者であり、職や居場所を閉じられ路上に出るしかなくなった人たちです。SOSを発してきた人のところに駆けつけての緊急救援、食事に提供などで活動している市民運動の世話役の一人、反貧困ネット事務局長の瀬戸大作さんは、こんな報告をSNSで発信しています。 「3時間かけてSOSを受けて向かった先は那須高原だった。ナビにもでてこない場所に何故いたのか。『山中で死のうと思った』。彼は私に呟いた。所持金は40円、3日間何も食べていない。コロナ感染の前に仕事を辞めて社員寮から出るしかなく、車上ホームレスとなった」。
「接待を伴う飲食業」はコロナの発生源になるということで、繁華街の灯が消えました。風俗産業とそこで働く多くの人が仕事場を失いました。当初、政府も自治体も支援対象から風俗関連をはずしていました。当事者の運動でそのいくらかは是正されましたが、差別と貧困が最も弱者のところに集中している事実はなくなっていません。セックスワーカーの健康と安全のために活動するグループSWASH代表の要友紀子さんは、学校閉鎖で仕事を休まざるをえなくなった保護者向けの支援金制度から風俗従事者初対象外になっていたことから始まった職業差別撤回闘争の顛末を、やはりSNSで怒りと悲しみをこめて報告しています。
病院のベッドが足りないため感染した後も自宅待機をせざるを得なくなった人が次々と亡くなっています。行き倒れなどで変死扱いされた人たちからコロナウイルスが見つかる例も後を絶ちません。それ以前に、咳や発熱などの症状を抱えながらPCR検査が受けられないひとが山積みです。「健康になること」は基本的人権のはずが、現実はこの始末です。
新型コロナウイルスが猛威を振い、人びとが「自粛」の殻に閉じこもるなか貧困、差別、人権問題が噴出しているのです。 ウイルスを封じ込むには人々の動きをつかまなければならない問うことで、監視と密告が社会を変質させています。感染症の猛威は憲法を、そこでうたわれている生きる権利を、自由と民主主義を封じ込めています。コロナが終結したとしても、その後遺症は社会を蝕んでいく恐れがあります。
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