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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2021年01月29日02時55分掲載
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米国
米新大統領就任 日本に与える影響は
1月20日、米大統領選挙で当選が確定したジョー・バイデン候補が正式に大統領に就任し、新政権をスタートさせた。同日行われた就任演説でバイデン氏は、6日の米連邦議会議事堂の襲撃事件について触れ、「“平和的”な手段で政権交代が行われるべく、数日前と同じ場所にこうして集まることができた」「民主主義は貴重なものだと学んだ」と、平和と民主主義の重要性を語っている。
議事堂襲撃事件は、ドナルド・トランプ前大統領が選挙の結果は“盗まれたものである”と主張し、「議事堂へ歩いて向かおう。私も共に行く」と支持者に訴えかけたことが発端になったと言われる。支持者の中には、「Qアノン」と呼ばれる陰謀論を掲げる集団もおり、この集団はトランプ氏を「秘密結社と戦う英雄」と崇拝していたため、バイデン氏の大統領就任にひどく落胆したという。メンバーの一部は4年後の大統領選挙におけるトランプ氏の再選を望んでおり、バイデン新大統領の政権運営次第では、再び過激な行動を起こす可能性もある。
このような波乱の最中に政権の幕を開けることとなったからか、バイデン大統領は就任直後から、波乱の象徴であるトランプ前政権の影響を払拭するように、様々な政策の転換を図っている。トランプ氏が脱退を指示した地球温暖化対策に関する「パリ協定」への復帰や、州を跨ぐ移動の際のマスク着用義務化、「世界保健機構(WHO)」への復帰、人種差別に関する差別的な住宅慣行の改善など、その分野は多岐に渡り、就任直後の短い期間でこれほど新たな政策を押し進める状況は異例ともいえる。バイデン氏は「スピード感が大切である」と述べていることから、今後も新たな政策を矢継ぎ早に示していく可能性が高い。
このような米新政権による政策の転換は、今後の日本へどのような影響を及ぼしていくのか。日米同盟に関しては、今月24日に岸信夫防衛相とロイド・オースティン米国防長官が電話会談を行っており、米軍普天間飛行場の移設について「(辺野古への移設が)唯一の解決策」との方針を確認している。また、28日に菅義偉首相とバイデン大統領が電話会談を行った際も、バイデン氏は「『核の傘』を含む拡大抑止を日本に提供する意思を示した」とされており、現状のままであれば、日米同盟の見直しが図られる可能性は低いと見られる。玉城デニー沖縄県知事が求めるように、基地負担を引き受けている沖縄県を加えて協議できる場を設けるなど、沖縄県民の声を米国に届ける取り組みの実現が急がれる。
東京五輪への影響はどうか。新型コロナの感染拡大が収まらない状況であるにも関わらず、日本政府は変わらず五輪の開催には前向きである。年明けに共同通信が行った世論調査では、五輪を「中止すべき」が35.3%、「再延期すべき」が44.8%という結果が出ており、全体の80%近くが7月の開催には反対しているものの、政府から「中止を検討している」という言葉は露ほども出ない。東京オリ・パラ組織委員会の高橋治之理事は、ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に応じた際、「東京五輪を予定通り7月に開催できるかどうかは米国やバイデン大統領の支持が得られるかどうかで決まる」と述べたと報じられており、五輪関係者のバイデン政権に対する期待の高さが感じられる。バイデン氏は、日本国内のコロナの感染拡大状況を窺っているのか、大統領就任後に東京五輪に関する発言をしていない。米国の意向がすべてではないものの、同氏の今後の発言次第では、日本政府の東京五輪への姿勢が変わる可能性は大いにあるといえる。
米中関係はどうか。中国に対して米国は、これまでと同様に経済、安全保障、人権などの分野で厳しい対応を求めていく一方で、気候変動やコロナ対策などの世界規模の問題については協力を求めていくと見られている。トランプ政権と比較すると“軟化した”とも捉えられるが、国際協調路線を取っているバイデン政権が、国際世論を味方に付け、米国単独ではなく同盟国間で協調して圧力を掛けられる状況は、中国にとってトランプ政権以上に脅威に感じられるのではなかろうか。日本は、そのような米中関係の狭間に置かれながら、微妙な舵取りを求められることとなる。日米同盟維持の観点から、日本政府は米国の影響を強く受ける状況下にある一方で、経済大国と化した中国との関係を完全に切り離すことも難しい。「米国、中国にどちらかにつけばよい」ということではなく、直面する問題ごとに日本が自立した答えを示すことが必要となってくる。
トップダウンで方針を決定するトランプ政権と異なり、バイデン政権は事務方や閣僚などが議論を積み上げるボトムアップでの政権運営を行うとされる。そういう点では、トランプ政権のような余計な摩擦を生む危険性は低いものの、事務方レベルでの粘り強い交渉や調整などが求められてくる。米中関係が複雑化し、五輪開催を控える中で、日本がどのような政策を進め、世界の中でどのような役割を担えるのか。今後の動向に世界の注目が集まる。
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