4月7日にネオニコチノイド系農薬のスルホキサフロルの屋外使用禁止の方針を明らかにしていた欧州委員会は4月29日、正式に屋外使用を禁止するEU規則の改正を官報に掲載した。改正されたEU規則は5月20日より発効する。奇しくも5月20日は「世界ミツバチの日(World Bee Day)」。スルホキサフロルは、EUでは2015年に農薬として登録され、2018年に屋外使用が禁止されたイミダクロプリドなどに代わる低リスクの殺虫剤だとされ、使用が推奨されていた。しかし、そうした希望的な見方も、わずか7年で実質的に禁止されることとなった。(有機農業ニュースクリップ)
欧州委員会はスルホキサフロルのリスク評価において、屋外で使用した場合のマルハナバチと単独性ハナバチへのリスクは低いと結論づけることはできず、リスクを排除できないと結論づけた。したがって、スルホキサフロルは常設温室での使用に限定することが必要かつ適切であると判断したとしている。
このEU規則改正で、加盟国は、必要に応じて、遅くとも2022年11月19日までに、スルホキサフロルを含む農薬の認可を撤回するか修正するものとされている。
・Official Journal of the European Union, 2022-4-29 Commission Implementing Regulation (EU) 2022/686 of 28 April 2022 amending Implementing Regulations (EU) 2015/1295 and (EU) No 540/2011 as regards the conditions of approval of the active substance sulfoxaflor (Text with EEA relevance) https://eur-lex.europa.eu/eli/reg_impl/2022/686/oj
欧州委員会は4月7日、スルホキサフロルについて、加盟国の賛成を得られなかったが、今春に委員会として屋外使用を禁止するEU規則を決定すると発表した。スルホキサフロルのリスク評価を行ってきた欧州食品安全機関(EFSA)は昨年、マルハナバチと孤独性のハチ類への有害性が否定できないとする評価結果を公表していた。これを受けて欧州委員会は、スルホキサフロルの屋外使用を禁止するよう提案し加盟国に諮っていた。常設委員会、上訴委員会ともに必要な賛成が得られなかったが、欧州委員会としてEU規則の改正に踏み切った。
・European Commission, 2022-4-7 Sulfoxaflor: Commission restricts the use of harmful pesticide for pollinators https://cyprus.representation.ec.europa.eu/news/sulfoxaflor-commission-restricts-use-harmful-pesticide-pollinators-2022-04-07_en
国際農薬行動ネットワーク(PAN)・欧州は4月8日、欧州委員会の決断を歓迎する声明を発表し、「禁止に反対する圧力を受けたのも関わらず、断固として立ち向かったことを高く評価する」と述べていた。
・PAN Europe, 2022-4-8 European Commission bans bee-toxic Sulfoxaflor insecticide: One less bee-killing neonicotinoid in the EU https://www.pan-europe.info/press-releases/2022/04/european-commission-bans-bee-toxic-sulfoxaflor-insecticide-one-less-bee
世界ミツバチの日に合わせ国際農薬行動ネットワーク(PAN)・欧州は5月20日、欧州委員会の対応は遅すぎるとする声明を発表した。その中で、スルホキサフロルの屋外使用禁止について、「多数の加盟国の反対にもかかわらず、欧州委員会は断固として禁止を進めた。キリアキデス委員、ありがとうございました」と歓迎した。その一方で「ハチに有害な殺虫剤のスルホキサフロルは禁止されたが、加盟国と欧州委員会はアグリビジネスの利益よりもハチの保護を優先させることに反対し続けている」と避難している。また、屋外使用を禁止したスルホキサフロルと同じネオニコチノイド系農薬のフルピラジフロンについて、バイエルから関係するデータの提出を受けていて、「ハチ類への毒性を示す研究が増えているにもかかわらず、加盟国と欧州委員会は禁止を延期し続けている。加盟国が禁止に踏み切れないのは、ハチ保護に対する彼らの意志の低さを改めて浮き彫りにしている」とも、その姿勢を批判している。
・PAN Europe, 2022-5-20 World Bee Day: Progresses to protect bees in the EU are too scarce! https://www.pan-europe.info/blog/world-bee-day-progresses-protect-bees-eu-are-too-scarce
欧州委員会は2030年までに化学農薬の使用量の半減を目標とする《農場から食卓へ(Farm to Fork)戦略》を策定している。しかし、これでは不十分だとして、2035年までに化学農薬の完全な使用禁止を求める欧州市民の市民発議が進められていた。この発議の期限はこのコロナ禍で1年延長されたが、昨年9月に118万人の署名を集めている。現在署名の有効性が審査されているが、この市民発議を呼びかけたSave Bees and Farmers ECIは、成立要件の100万人を超え発議は成立するだろうとみている。市民発議が成立した場合、欧州委員会は何らかの行動を迫られることになる。
・Save Bees and Farmers ! https://www.savebeesandfarmers.eu/eng
・European Citizens' Initiative Save bees and farmers ! Towards a bee-friendly agriculture for a healthy environment https://europa.eu/citizens-initiative/initiatives/details/2019/000016_en
● 急増する日本のスルホキサフロル出荷量
EUが屋外使用を禁止したスルホキサフロルは、日本では2017年に農薬登録されているが、米国の開花期の使用禁止のような規制はない。スルホキサフロルは、21年度から始まった農薬再評価の優先対象にもなっていない。この数年、絶対量はまだまだ少ないもののスルホキサフロルの出荷量は急増している。稲作での使用も多く、農民連食品分析センターの検査でも、コメからも検出されるケースが増えているという。EUはマルハナバチなどへの有害性が否定できないという影響評価に、予防原則に立って屋外使用の禁止という実質的な禁止に踏み切った。日本とて見過ごすわけにはいかないだろう。早急な再評価を行い禁止を含む規制を強化すべきだ。
スルホキサフロル出荷量[��] --------------------------- 2018年 5.4 2019 10.3 2020 16.3 --------------------------- ※国立環境研究所まとめ 2020年度は『農薬要覧2021』よりの試算値
● 世界ミツバチの日 (World Bee Day) ミツバチなどの花粉媒介者(ポリネーター)の重要性や、花粉媒介者が直面している課題や持続可能な発展への貢献への意識を高めるため、5月20日を「世界ミツバチの日World Bee Day」とすることが、2017年、FAO総会で承認された。その後、国連総会でも採択された。
・FAO 世界ミツバチの日 (World Bee Day) https://www.fao.org/japan/portal-sites/international-days/0520/jp/
【関連記事】 ・新ネオニコ系スルホキサフロル マルハナバチの繁殖に影響 http://organic-newsclip.info/log/2018/18080965-1.html ・農水省 ネオニコ系スルホキサフロルを農薬登録 http://organic-newsclip.info/log/2017/17120875-1.html ・スルホキサフロル 4団体が厚労省へ要望書提出 http://organic-newsclip.info/log/2017/17030771-2.html ・スルホキサフロルの承認をやめて 4団体が要望書を提出 http://organic-newsclip.info/log/2017/17020767-1.html ・ネオニコ系新農薬スルホキサフロル 近くパブコメか http://organic-newsclip.info/log/2017/17020766-1.html ・スルホキサフロルの承認手続き再開 米国のような「落花後」規制は盛り込まれず http://organic-newsclip.info/log/2017/17020760-1.html
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