今この国では外国から働きに来ている人たちが急速に働くこと、住み続けることが窮屈になっている。高市政権誕生を期に制度上の締め付けが強くなっているからだ。言い換えれば政治と行政による排外主義と外国人ヘイトが強まっているのだ。筆者が住む埼玉県では地方行政と地方議会に排外主義が蔓延するというありえない事態が出現している。そのキーワードになっているのが「体感治安」という聞きなれない概念だ。(大野和興)
最近の埼玉県議会での問答から紹介する。4月25日付けの埼玉県議会が発行する広報誌「埼玉県議会だより」に、以下のような議員と知事との問答が載った。
議員「知事は県内の外国人増加による治安悪化について、明確なファクト(事実)はないと答弁しているが、県民の体感治安は悪化しているという話もある。刑法犯や外国人犯罪が増加している中で、県民の体感治安を改善するためにどのように取り組むのか」 埼玉県知事「治安維持については知事から独立した県警察が所管している。知事ができる分野として、警察署の新設や警察官の増員を進め、地域のパトロールを行う自主防犯活動団体や市町村の防犯カメラ整備の支援を行っている。引き続き地域の治安維持体制強化に向けた支援を行うことで体感治安の改善につなげていきたい。」
この問答のキーワードは「体感治安」という言語である。どういうものか調べてみた。治安が「悪い」、あるいは「よい」という具体的な事実(ファクト)や信頼できる調査などがないのに「治安が悪い」あるいは「治安が良い」という空気感が人々の間に漂っていることを表現するときに使われる言葉、ということができる。
ウイキペディアによると、この言葉は警察用語であると規定されている。つまり取り締まる側、権力側が市民、庶民をみる視線であり、上からの民衆把握、民衆操作に道具としての用語ということができる。
ウイキペディアはこう述べている。 体感治安(たいかんちあん)とは、人々が感覚的・主観的に感じている治安の情勢をいう。定量的に統計上の客観的な数字(犯罪認知件数や検挙率など)で表される治安である「指数治安」とは異なる。 「体感治安」「指数治安」は共に、警察用語である。警察庁においては、人心の安寧を図るために「指数治安」とは別に「体感治安」が重要視されており、「刑法犯認知件数」や「前年からの変動」と言った指標からは捉えられない国民の治安に関する認識を把握するため、定期的にアンケート調査などを実施している。
この住民取り締まり用語が、地方政治の最前線である地方議会に在日外国人取り締まりの言葉として登場しているのが埼玉県の現実なのだ。それがいかに荒唐無稽なものかは、東京新聞の以下の記事で詳細に分析されている。
東京新聞2026年1月27日 埼玉・川口市民の「体感治安」が急に悪化した背景には何が…犯罪認知件数は20年前比で3分の1以下に改善
https://www.tokyo-np.co.jp/article/464624
この記事は以下の書き出しではじまる。 「25日告示された埼玉・川口市長選。「防犯は外国人問題を解決すれば解決できる」など、外国人が増えているために治安が悪化していると主張する候補がいる。インターネットでも同種の主張は多い。実際に外国人が増えたため犯罪が増えているのだろうか」
記事は具体的に公式の統計数字を示して、 ・川口市では外国人の居住者は急増しているのに刑法犯は大幅に減っている。 ・しかし川口市が実施した市民意識調査では2024年以降「治安が悪い」と答えた人が急増。 ・その背景にSNSによるクルド人攻撃があり、さらにその背景に神奈川県から来た男性が主導するクルド人を犯罪者として糾弾するヘイトデモが23年9月からあった。 などと指摘している。
川口市議会でも、こうした動きに便乗して居住外国人を攻撃する議員が現れるなど地方政治家の劣化が進んだ。この動きは周辺市町議会にも波及、高市政権の居住外国人管理強化政策と連動しながら上からの排外主義波及の深まりを支えている。そのことは稿を改め書きたいと考えている。
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