・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・文化
・国際
・アジア
・環境
・欧州
・市民活動
・核・原子力
・中国
・コラム
・イスラエル/パレスチナ
・農と食
・入管
・反戦・平和
・教育
・米国
・みる・よむ・きく
・検証・メディア
・外国人労働者
・司法
・国際
提携・契約メディア
・AIニュース
・司法
・マニラ新聞
・TUP速報
・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus
・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2025年01月11日
・2025年01月08日
・2025年01月07日
・2025年01月04日
・2025年01月01日
・2024年12月31日
・2024年12月30日
・2024年12月27日
・2024年12月26日
・2024年12月25日
|
|
2010年07月10日07時53分掲載
無料記事
印刷用
アジア
【イサーンの村から】(2)牛生肉ラープ、おいしく、しかも抗アレルギー 食べなかったら損ですよ 森本薫子
イサーン人は本当に牛が好きだ。結婚式や得度式(男子の出家式)などのお祝い事の時には、必ず牛肉のラープ(肉と唐辛子、ライム、ナンプラー、ミントなどを和えた料理)がでる。村の男性何人かがと殺してさばいて、それが祝膳として出てくるのだ。それも生肉で、生血を混ぜる!血だけではない。黒緑色の苦い胆汁までも入れるのだ。湯がいた肉で作るラープもあるが、生肉が断然人気である。
◆ぎょう虫と共生でアレルギーなし
村内では毎日、夜中にと殺した牛の肉が早朝から売っている。お昼までにはほぼ売切れてしまうので、午後には手に入らない。さばきたての新鮮な肉なので生でも食べられる。私も今まではよく食べていたが、最近は生肉は食べないようにしている…。美味しくて好きなのだが、私の場合、すぐにおしりから“ぎょう虫(ちゅう)”がでてきてしまうのだ。イサーン人もそれは同じようで、時々虫下しの薬を飲んで出している。普通に薬局に売っていて、寝る前に飲むと次の朝、便と一緒に出てくるのだ。または、ぎょう虫に効く薬草を食す人もいる。お腹(腸)の中で静かにしているぎょう虫もいれば、肛門からもぞもぞ出てくるのもいるようだ。人に寄生するものは深刻な害はないらしい。 この話しをJVC(日本国際ボランティアセンター)の人にしたら、さすが、様々な国・地域に行っているJVCスタッフ。多くの人が、「ぎょう虫・回虫体験」をしていた。おしりから出てくるなんてよくあることで、腕を掻いていたら、腕の皮膚から出てきたなんて話も!こんな話を東京の電車の中でしたことがあったのだが、周りの人はさぞかし眉をひそめていたことだろう。
日本でも牛刺しや馬刺しを食べるが、ぎょう虫・回虫が出たことはない・・。私が小学生の頃は定期的に学校でぎょう虫検査があった。セロファンのようなものをおしりの穴にぎゅっとくっつけ、ぎょう虫の卵がついていないかを検査した。昔は野菜にも今ほど農薬を使わず育てていたから、卵がついていたりしていたのだろう。 調べてみると、ぎょう虫・回虫持ちは悪いことばかりではない。アレルギーになりにくい体質になるようだ。これらの寄生虫の出す酵素の関係でアレルギー反応を起こす物質が抑制されるとか。だから寄生虫が少なくなった最近の日本では、アトピーや花粉症に悩まされる人が多いとの研究もあるそうだ。 実は、私は妊娠中に一口だけ生肉料理を味見しただけなのに、ぎょう虫がおしりから出てきたことがあった。健診の時に先生に「あの〜 お腹にぎょう虫がいるみたいなんですけど・・」と聞くと、さすがにタイ人の先生は特に驚く様子もなく、「虫下しの薬は今は飲めないから、まあ、出産後までほっておきましょう」との答えだった。ほっておいたら、いつの間にかいなくなったみたいだった。 もうすぐ1歳になる息子が今のところなんのアレルギーもないのは、このぎょう虫のおかげなのか。タイの農村ではこんなに生活に慣れ親しんだ(?)ぎょう虫・回虫だが、ぎょう虫症や回虫症になったという話はまず聞かない。農薬が原因で病気になったという話はよく聞くが。
あ〜 でも、これを読んで「タイで生肉は絶対に食べない!」なんて思わないでください。本当に美味しいんですよ、生肉。タイに行って、生肉ラープを食べなかったら損です。あなたの食の世界が広がること間違いなしですから!
◆牛は暮らしの保険
イサーンの農家にとって牛を飼うことは、食べるためだけではない。牛を飼い、子牛が生まれたら売ることによって収入が得られる。牛はちゃんと交尾させれば毎年1頭の子供を生むので、何頭も飼えば1年に何頭分もの収入になる。1年に一度の米の収穫が主な収入となるイサーンの農民にとって、旱魃や洪水で稲が全滅するような事態が起きたときに、牛を売ることによって臨時収入を得ることもできる。保険のようなものだ。 サトウキビやキャッサバ、ゴムの木の栽培からの収入もあるが、これらも市場価格の変動で安定しない。もちろん、牛も病気にかかるなどのリスクはある。どれも確実ではないということだ。日本のサラリーマンも、今時はいつリストラされるかわからないから不安は同じ? 土地と家と食べ物だけは確保できるイサーンの農民の方が、まだ楽天的でいられるのかもしれない。
牛の価値は品種にあるようで、耳が長くて毛並みのいい血統の牛は、何百万円という値がついたりする。松坂牛や神戸牛のように、「食べて美味しい」という価値ではないく、見て美しい牛、質の良い牛。タイでは、月刊「牛」雑誌なるものが何種類も出版されているほどだ。本当にいい牛を飼っている人は、毎日牛の毛並みをブラシで整え、蚊にくわれないように、牛小屋に蚊帳を張っていたりする。盗まれるのが心配で、夜も牛小屋の隣で寝ていたり!血統書付きの犬やスポーツカーのように、これはもう趣味の域だ。
うちの地域でも、毎週木曜日には、「牛市場」がたつ。売りに来る人、買いに来る人、自由に参加して個人的に話をつけて、売買する。ここでは血統書付きの牛などの売り買いはまずなく、一般農民が自分の牛を売り買いする市場だ。「牛を見る目」がないと選ぶのが難しい。とにかくイサーン人にとって牛は、食、収入、趣味・・と様々な意味を持つ重要な存在なのだ。
(イサーン:タイ東北部の総称)
|
関連記事
【イサーンの村から】(1)カオデーン農園の日々 楽しいこともうんざりすることも 森本薫子
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
牛の市場
生肉のラープ。こたえられないおいしさ。
月刊『牛』雑誌のいろいろ
|