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2011年08月09日13時32分掲載
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反戦・平和
自衛隊任務の膨張とソマリア問題(その1) 〜海外に初の自衛隊”軍事”基地開設』〜 池住義憲
震災復旧・復興、原発事故対処、今後のエネルギー政策、菅首相退陣時期を巡る永田町の政局・・・。連日、紙面で大きく報道されている一方、静かに、着実に進められている”危険な動き”がある。この一ヵ月間でもすくなくとも三つ。一つは、国際平和維持活動(PKO)に関する動き。二つ目は、武器輸出三原則見直しの動き。そして三つ目は、2011年版防衛白書の内容と方向です。いずれも、自衛隊活動・自衛隊任務の「膨張・拡大」に関するもの。大切な問題なので、経緯概要も含めできるだけわかり易く、2回に分けてお送りします。やや長文になりますが、関心ある方、読んでください。(池住義憲「8月メール通信」より)
1.三つの危険な動き
7月4日、外務・防衛両省など主要省庁の局長クラスが参加する「PKOの在り方に関する懇談会」は、中間報告を公表。中間報告は、自衛隊の国連平和維持軍(PKF)の本体業務への参加、PKO(国連平和維持活動)五原則の扱い、武器使用権限の拡大などについてそれぞれ見直し・検討が必要だと指摘しています。自衛隊の海外での任務をさらに「膨張」させるための下地づくりです。
1992年6月成立のPKO協力法は、自衛隊のPKO参加条件として、�(響菘�事国の停戦合意、�∋臆端�入国の同意、�C耄�性、�ぐ幣紊慮饗Г里Δ舛い困譴�が崩れた場合の撤退、�ド雋鏤藩僂詫廾�等の生命防護に限る、という5原則を明記しています。懇談会の中間報告は、これを見直そう、変えようと提案しています。武器使用権限については隊員の生命防護に限定せず、他国の部隊・要員防護の場合でも使用できるようにその範囲と権限を拡大しよう、というのです。
それから2日後の7月6日、今度は防衛省の「防衛生産・技術基盤研究会」が、中間報告を公表。これは、日本が戦闘機などの国際共同開発・生産に参加・参入できるようにするため、一切の武器や武器技術の輸出を禁じた武器輸出3原則を見直す必要があると指摘しています。そして、今後、研究会は日本の軍需企業への聞き取りを行ないながら、来年(2012年)2月に最終報告をまとめる方針です。
三つ目の動きは、8月2日に公表された「2011年版防衛白書」。これは民主党政権が昨年12月に決定した「防衛計画の大綱」を受けて作成したもの。白書は、大震災復旧・復興支援、中国への強い警戒感を示して日本海・東シナ海・南西諸島および北方領土など日本周辺地域の安全保障強化とそのため兵器の近代化を進めること、などが記されています。兵器の近代化とは、次世代ステルス機開発、弾道ミサイル開発、急襲揚陸艦調達、中古空母改修、潜水艦購入、などです。自衛隊の機動性と即応性をさらに高めようとするものです。
白書はさらに、日本を遠く離れた地域での”国際貢献”を強調しています。具体的には、ソマリア沖アデン湾での海賊対処と、PKOへの参加です。海賊対処ではこの6月、アフリカ・ジプチに自衛隊独自の活動拠点(”軍事”基地)を開設。白書ではこの新拠点を「わが国の揺るぎない意志を示す象徴的存在」と評価し、長期的な取り組みを示唆しています。
こうした動きに呼応して、野党自民党も動いています。自民党結党以来の悲願である憲法”改正”(9条”改正”)へむけて、着々と作業は進めています。7月20日には、自民党国家戦略本部が「日本再興」と題する報告書を発表しました。自民党が考える中長期政策の方向性を定めたものです。
内容は、非核三原則のうち核兵器の一時的持込を容認すること(非核2.5原則へと変更)、学校での国旗掲揚・国家斉唱の義務化、などです。極め付けは、「集団的自衛権の行使を認め、範囲を法律で規定」すること。自衛隊の国際的平和活動に関する一般法(派兵恒久法)制定も盛り込まれています。
”国際貢献”政策では、与党民主党も野党自民党も、共通するところが多い。現在の政局の中で、または政局がらみの中で、このままいってしまったらどうなってしまうか。そうした危機感から、本稿は、以下、自衛隊が海外(ジプチ共和国)に初の”軍事”基地を開設するに至ったソマリア沖アデン湾での海賊対策について考えてみます。
2.ソマリアの現状
まず、ソマリアの現状から。ソマリアは、19世紀後半から120年余にわたって英国とイタリアにり、それぞれ北部と南部を植民地支配された国。1960年の独立後も紛争・対立が絶えず、1980年初頭から内戦状態に。90年代になっても、各地域の支配権を持ち私兵を持っている国内の豪族など各勢力間での抗争が続き、今日にいたるまで国はほぼ南北分裂状態(内戦状態)、無政府状態は続いています。
2000年5月に暫定政権が出来たものの、内戦は続き、国家は分裂されたまま。氏族(豪族)・軍閥・宗派間での対立という群雄割拠状態です。現在のソマリア国土は、1991年5月からの暫定政権(アハメド大統領)が実効支配しているとされている南部、同年に独立宣言した旧英領でソマリア北部のソマリランド、1998年に氏族が自治宣言し自治政府が治めるソマリア北東部のプントランド、の3つに分割されています。
暫定政権による治安対策の失敗もあって、近年ではイスラム武装組織アッシャバーブの攻勢が強まっています。アッシャバーブは暫定政権が実効支配しているとされているソマリア南部の首都を含む南西部を支配し、暫定政府軍と激しい戦いを繰り広げています。つい先日(8月6日)、アッシャバーブの武装勢力が首都モガディシオから撤退したと報道されましたが、秩序回復の目途はまだ立っていません。
こうした情況下で、ソマリアの人口推定950万人の四分の一前後が国内避難民に、約60万人が隣国ケニヤやエチオピアへ難民として出国しています。今年だけでもすでに13万人を越える住民が出国したと言われています。国連を含め国際社会は、20年にわたって続いているソマリア内戦を終結させることに失敗。加えて、昨年、過去30年間で最悪と言われたソマリアを含むケニア、エチオピアなど東アフリカ地域を襲った大干ばつ・・・。
国連人道問題調整事務所(OCHA)は、8月3日、これまで指定した2地区に加え、首都モガディシオを含む3地区を新たに飢饉地域に指定しました。とくに南部で深刻な食糧不足と飢餓が広がり、すでに数万人が死亡。今後国際社会が対応できなければ、さらに数十万人の命が奪われると警告しています。
3.ソマリア沖の海賊問題
通常、海賊行為とは「貧困にあえぐ人々が生活の糧を手にするため犯罪に及んだもの」と解されています。ソマリア沖アデン湾での海賊行為も、そうしたもの多いでしょう。その意味で海賊問題は、「陸」の問題です。海上での犯罪取締りと同時に、前述したソマリア国内の貧困、飢餓、内戦、無政府状態問題に取り組まなくてはいけません。
犯罪に対しては軍事力ではなく、警察権で対処する。これが本筋です。日本で言えば海上保安庁の任務です。自衛隊ではありません。現に2000〜2004年、マラッカ・シンガポール海峡での海賊対処では、海上保安庁が人材育成支援や沿岸警備システム面での協力など、沿岸諸国と連携・協力して海賊対策を行ない、効果を上げた事例があります。
ソマリア沖の海賊は、近年、今までのものと異なるものが見られます。自動火器やロケット砲などによる攻撃能力も備え、重武装化が進んでいます。最新通信機器を活用し、組織的かつネットワーク化も進んでいます。アデン湾では昨年ころから、奪った船舶を『母船』として出撃拠点にするケースが増え、東はインド洋から南はモザンビーク海峡まで活動域も広がってきています。
これは何を意味しているか。モスクワ東洋学研究基金のセルゲイ・ルジャニン教授は、「海賊行為は、自前の教育・訓練養成システム、諜報機関や最新の通信機器、巨大な資本を有した、強力な国際機構であることに、いまや疑いの余地はない」と述べています。「貧困にあえぐ人びとが生活の糧を手にするため犯罪」を越えて、政治的・軍事的要素を色濃く持っている。そしてこの国際機構は、「過去にいずれかの国で諜報機関に関係していた専門家を利用していると考えるに十分な根拠がある」とさえ指摘しています。
これは新たな形の”国際テロリズム”であると言うのです。ルジャニン教授のこの指摘は、米国オバマ政権の動きによって裏づけることができます。米国は、去る6月29日に「対テロリズム戦略」を発表しました。その中で、ソマリアのイスラム過激組織アッシャバーブとイエメンの「アラビア半島のアルカイダ」などへの対策を強める、と強調しているのです。
ウサマ・ビン・ラディン容疑者殺害を受けて、2001年10月からのアフガニスタン、パキスタンでのアルカイダ掃討作戦を続行しながら、今後は地域限定的な”テロ掃討作戦”へと戦略を転換するとしています。ソマリア沖アデン湾での海賊対策は、米国にとっては米国の”テロとの戦い”における地理的且つ戦略的に重要な限定された地域と位置づけられているのです。
この理解は大切です。海賊問題の実態をどう見るか、理解するか。米国の意図・戦略・実態をどう見るか、理解するか。この理解は大切です。どう理解するかによって関わり方、取り組み方がまったく変わります。 (つづく)
*日本政府はどういう理解に基づいてこれまで関わりをしてきたか? 憲法に照らしてどうか? ジプチに開設した海外初の自衛隊”軍事”基地とは? それはどういう意味をもっているのか? ではどうしたいいか? これらは次回に!!
【次回メール通信内容予定】 4.日本政府の海賊対処 5.ジプチに海外初の”軍事基地”が! 6.ではどうしたらいいか〜〜今後へ向けて(日本の役割は?)
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