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   2014年06月01日17時26分掲載
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検証・メディア
   英国で新たな新聞界の自主規制組織が生まれる −大衆紙の盗聴事件を受けて
    
   
    
     
      
       英国の新聞・雑誌業界に新たな規制・監督組織が、今年いよいよ立ち上がる。大衆紙の大規模な盗聴事件発生への反省を機に設立される「独立出版基準組織」(通称「IPSO」=Independent Press Standards Organisation)だ。報道基準の遵守体制を厳格化し、巨額の罰金を科す力を持つ。先に自主規制組織として機能してきた「報道苦情処理委員会(「PCC」=Press Complaints Commission)」の後を引き継ぐもので、IPSOが発足次第、PCCはなくなる。(ロンドン=小林恭子)
   IPSOには多くの新聞社が参加する見込みだが、主要新聞のいくつかは参加を保留中だ。
   果たして業界からの独立性を示すことができるだろうか?
   9月に本格設立を目指すIPSOのこれまでの経緯やPCCとの違いに注目してみた。(以下は、「新聞協会報」5月13日付掲載の拙稿に若干補足したものである。)
 
  ー大衆紙の盗聴事件を受けて
   IPSOのキーワードは「新しい」、「毅然としている」、「独立」だ。「独立」は外部の組織の意向を受けないという意味とともに、新聞・雑誌業界内の権益との癒着がないことを示す。
   業界から真に独立しているかどうか、実際に自分たちの報道不正をどれだけ果敢に裁けるかーこうした点が新規制組織の評価の勘所となる。
   組織発足までを振り返ると、きっかけは2005年に発覚した、日曜大衆紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」による、政治家、著名人などに対する携帯電話の伝言メッセージの盗聴疑惑であった。
   2011年7月、盗聴の犠牲者の中に失踪した14歳の少女がいたとガーディアン紙が報道し、国民的な関心事となった。
   ニューズ紙は報道から数日後に廃刊され、まもなくしてキャメロン首相が新聞界の文化、慣行、倫理について調査する委員会(判事のブライアン・レベソン氏が委員長)を立ち上げた。
   12年末、レベソン委員長が報告書を提出。委員長は報告書の中で、PCCが盗聴疑惑の解明に不十分な役割しか果たせなかったことを指摘し、新たな規制・監督組織の立ち上げを提唱した。
   新聞界は新組織の設立におおむね同意したものの、報告書が組織の発足を「法令に基づく」と書いたことで、大きく反発した。英新聞界は法令によらず、自主規制で活動を続けてきた長い歴史があるからだ。
   業界内で代替案を統一できないままに時が過ぎた。その後、報道被害者を支援する団体「ハックトオフ」のロビー活動もあって、レベソン提案を具体化するための政治的動きは途切れることはなく、13年3月、与野党3党は法令化にはよらず、女王の勅許(「王立憲章」)による設置案で基本合意した。10月、女王の諮問機関・枢密院がこの組織の設立を承認した。
   しかし、この後、新聞界の調整は難航した。政府案には乗らず、独自にIPSOを設置する動きでまとまるようになったのが13年末であった。
  ーPCCでは不十分
   PCCは1991年、大衆紙による著名人のプライバシー侵害記事が相次いだことへの反省から発足。自主規制組織として先に存在していた新聞評議会(1964年発足)を刷新させた。
   「新聞の自主規制体制を管理する独立組織」として新聞社、雑誌社が加盟し、報道についての苦情処理を主な任務とした。運営資金は加盟社からの拠出金により、その管理は別組織の「新聞基準財務機関」(PressBof)が行った。
   別組織で報道倫理規定委員会(業界関係者がメンバー)を作った倫理規定を元に苦情を処理した。
   PCCは新聞・雑誌社から拠出金を受け取っているが、業界からは独立した組織とする。
   その構成は
   (1)PCCの方針を決める委員会(17人体制、委員長を含めた10人が業界関係者)
   (2)事務局
   (3)問題が生じたときに業界とは別の見方ができる「独立査定者」
   (4)任命委員会(3人体制、委員長、PCCの会員、独立査定者)―であった。
   レベソン報告書はPCCを強く批判していた。業界からの「独立性に欠けていた」、「苦情が取り上げられても、対応は不十分で、PCCに批判されたジャーナリストへの懲罰行為が欠けていた」。さらに、PCCは新聞界への批判を阻止し、「盗聴事件への調査ではニューズ紙を支持したことで、信頼を失った」。
   新設されるIPSOはPCCとは違う組織であることを明確にしなければならなくなった。業界外の人材の投入割合を大きくすることで業界からの独立性を高め、本格的な自主規制・監督組織となることを目指している。
   ウェブサイトによると、IPSOの機能は:
   (1)「報道規定の違反に関する苦情を処理」
   (2)「規定が遵守されているかどうかを調査」
   (3)「内部告発用ホットラインの設置」、
   (4)「苦情を持つ読者と出版社側との間に裁定サービスを提供」
   など。
   重大な規定違反、不正などがあった場合、最大で100万ポンドの罰金を科す力も持つ。
   調査の実行、ホットラインの設置、裁定サービスの提供、罰金を科すなどの機能はレベソン報告書が提案した規制組織、そして昨年与野党が合意した規制組織案にも入っていた。IPSOはレベソン案をほぼ踏襲した組織になり得る。
   IPSOに参加を希望する出版社は会員合意書に署名する(6年間有効)。IPSOの規則を変更する場合、会員全体の66%の得票が必要だ。取締役会と苦情を処理する委員会のそれぞれが12人体制で、7人が業界外の人物、5人が業界関係者(全国紙から2人、地方紙・スコットランド紙から2人、雑誌から1人)とする。運営資金は全国紙が62.4%、地方紙が32%、雑誌が5・6%を負担する。
  ー真に独立しているか?
   IPSOの取締役任命委員会(5人体制で、3人が業界外の人物、タイムズ紙編集長、元地方紙編集長)は、今年2月、取締役会の会長職を公募し、4月29日、控訴院判事アラン・モーゼズが選出されたと発表した。「IPSOが新聞界から十分に独立していないという懸念がこれで緩和されるだろう」(業界紙プレス・ガゼット、同日付)。一方、ハックトオフは「新聞大手が実権を行使するようになるだろう」とする声明を発表した。
   IPSOに参加していない大手紙はガーディアン、インディペンデント、経済紙フィナンシャル・タイムズだ。IPSOの業界からの独立性に疑問符がついていることがネックと言われている。
   FTは組織には加わらず、独自の苦情処理体制を設置すると発表した(4月17日付)。編集上の苦情を受け付ける職を新設する。この人物は編集長からは独立している。また、読者が記事の内容についてコメントを残したり、編集スタッフと意見を交換する機会を拡大する。
   大規模盗聴事件で、国民の新聞報道への信頼感は損害を受けた。はたして、失われた信頼をIPSOは取り戻せるだろうか。
   5月末、BBCラジオ4の「メディア・ショー」に取締役会の会長職モーゼズ氏が出た。業界から本当に独立した活動ができるかを聞かれ、弁明をしたものの、報道被害者団体の一員と丁々発止の会話となった。
   「主要政党の合意で、議会を通して決断がなされたことを思い出して欲しい。独立規制組織が真に業界から独立しているかどうかを確認する団体を王立憲章を使って立ち上げるはずだった。これを無視するのですか?」とハックトオフが問いかけたのが忘れられない。
   PCCの時代にも「独立している」と常に業界側は言ってきた。
   果たして、裁判が続く大衆紙盗聴事件を、新組織だったら、防げたあるいは懲罰を与えることができだろうかー?私自身、今のところ、大いなる懐疑を抱いている。 
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