・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・農と食
・国際
・アジア
・核・原子力
・入管
・反戦・平和
・教育
・文化
・中国
・市民活動
・米国
・欧州
・みる・よむ・きく
・検証・メディア
・外国人労働者
・司法
・国際
・イスラエル/パレスチナ
・市民活動告知板
・人権/反差別/司法
提携・契約メディア
・AIニュース
・司法
・マニラ新聞
・TUP速報
・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus
・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2024年12月02日
・2024年11月30日
・2024年11月29日
・2024年11月28日
・2024年11月27日
・2024年11月26日
・2024年11月22日
・2024年11月21日
・2024年11月20日
・2024年11月18日
|
|
2017年08月05日01時29分掲載
無料記事
印刷用
教育
もうひとつの”教科書問題” 総力を挙げてつぶしに来る極右と対峙する教育者の気骨
ある文章がネット上で静かな話題を呼んでいる。名門で知られる神戸・灘校の校長先生が書いた文章だ。同中学校が採択した歴史教科書に対し、地元県議や自民党国会議員が動き、文句をつけるハガキが殺到し、果ては産経新聞が批判的な記事を流し、それを受けて超右翼雑誌『WILL』が長文の論文を掲載して攻撃し、といった経過を冷静に、的確な分析のもとに報告している。いま、この国で何が起こっているか、淡々とつづられた文章を読みながら空恐ろしくなった。同時に、加計学園問題に毅然つぃて対峙した前川喜平前文部事務次官の存在と重ね合わせて、最良の教育者の気骨を感じた(大野和興)
「謂れのない圧力の中で ̶ ̶ ある教科書の選定について ̶ ̶」と題された和田孫博という署名入りのこの文章は、ある同人雑誌に書かれたものである。次の一文から始まる。
本校では 、本年四月より 使 用 す る 中 学 校 の 歴 史 教 科 書 に 新 規 参 入 の「 学 び 舎 」 による『ともに学ぶ人間の歴史』を採択した。本校での教科書の採択は、検定 教科書の中から担当教科の教員たちが相談して候補を絞り、最終的には校長を 責任者と す る 採択委員会で決定するが、 今回の歴史教科書も同 じ 手続きを踏ん で採択を決めており、教育委員会には採択理由として「本校の教育に適してい る」と付記して 届けて いる。
一連の動きは昨年末から始まった。経過はこうだ。
自民党の 一 県会議員から「なぜあの教科書 を採用したのか」と詰問された。 こちらとしては寝耳に水の抗議でまともに取り合わなかったのだが、年が明けて、本校出身の自民党衆議院議員 か ら 電 話 が かかり、「政府筋からの問い合わせな の だ が」と断った 上 で同様の質問を 投げか け てきた 。今 回 は 少 し 心 の 準 備 が で き て い た の で 、「 検 定 教 科 書 の 中 か ら 選 択 し ているのになぜ文句が出るのか分かりません。もし教科書に問題があるとすれ ば 文 科 省 に お 話 し 下 さ い 」と 答 え た 。
年が明け、葉書構成が始まる。
二 月 の 中 頃 から、今度は匿名の葉書が次々と届きだした。そのほと んどが南京陥落後の難民区の市民が日本軍を歓迎したり 日本軍から医療や食料 を受けたり している写真葉書で、 当時の『朝日画報』や『支那事変画報』など から転用 し た 写 真 を 使 い 、「 プ ロ デ ュ ー ス ・ 水 間 政 憲 」と ある。それに「何処の 国の教科書か」とか「共産党の宣伝か」とか、ひどいのはOBを名乗って「こ んな母校には一切寄付しない」など の添え書きが ある。 こ の 写真葉 書が約五十 枚届いた。そ れが収まりかけたころ 、今度は差出人の住所氏名は書かれている ものの文面 が 全く同一の、おそらくある機関が印刷して(表書きの宛先まで印 刷してある)、賛同者に配布して送らせたと思える葉書が 全国各地から 届きだし た 。
200枚を超える葉書が届いた。筆者は「届く度に同じ仮面をかぶった人たちが群れる姿が脳裏に浮かび、うすら寒 さ を 覚えた」と感想を述べている。
一体どんな教科書なのか。
この教科書を編集したのは現役の教員やOBで、既 存の教科書が高校受験を意識して要約に走りすぎたり重要語句を強調して覚え やすくしたり しているの に対し、歴史の基本である読んで考えることに主眼を 置いた 教科書 、写真や絵画や地図など を見ることで疑問や親しみが持てる教科 書を作ろうと新規参入したとのことであった。これからの教育のキーワードと もなっている「アクティブ・ラーニング」は、学習者が主体的に問題を発見し、 思考し、他の学習者と協働してより深い学習に達することを目指すものである が、そういう意味ではこの教科書はまさにアクティブ・ラーニングに向いてい ると言えよう。逆に高校入試に向けた受験勉強には向いていないので、採択校 の ほとんどが、私立や国立の中高一貫校や大学附属の中学校であった。
3月19日に産経新聞が一面で取り上げた。これが口火となって 、 月刊誌 『Will』の六月号に、近現代史研究 家を名乗る水間政憲氏(先ほどの南京陥落 写 真 葉 書 の プ ロ デ ュ ー サ ー )が 、「 エ リート校―麻布・慶應・灘が採用したトンデモ歴史教科書」という二十頁にも 及ぶ大論文を掲載した。
攻撃はメディアを使う大々的なものになったのである。こうした一連の経過を冷静に、淡々とつづりながら、筆者の和田孫博氏は戦争に国民を駆り立てた昭和史を思い、以下のように書く。
歴史家の保坂正康氏の『昭和史のかた ち 』( 岩 波 新 書 )を 読 ん だ 。そ の 第 二 章 は「 昭 和 史 と 正 方 形 ̶ ̶ 日本型ファシズ ム の原型 ̶ ̶ 」というタイトルで、 要約すると次のようなことである。 ファシズムの権力構造はこの正方形の枠内に、国民をなんとしても閉じこ めてここから出さないように試みる。そして国家は四つの各辺に 、「情報の一 元 化 」「 教 育 の 国 家 主 義 化 」「 弾 圧 立 法 の 制 定 と 拡 大 解 釈 」「 官 民 挙 げ て の 暴 力 」 を置いて固めていく。そうすると国民は檻に入ったような状態になる。国家 は四辺をさらに小さくして、その正方形の面積 をより狭くしていこうと試みるのである。
紹介した文章の全文は以下で読むことができる。
http://buff.ly/2vrR7HV
|
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
|