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2018年02月20日20時53分掲載
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社会
“悪夢の超特急”リニア中央新幹線の巨大利権構造 捜査の行方は早くも混沌
久しぶりの東京地検特捜部の登場で、大疑獄事件になるかと期待さているリニア中央新幹線工事巨額談合事件。当初はJR東海の単独事業だったはずが、途中から安倍首相の肝いりで政府資金が投入されることになるなど、政治がらみの動きが目立っていたので、国民の多くは「やはり」という感じを強めていた。しかし、捜査の周辺ではなにやら奇妙な動きが見え隠れする。いったい何が起こっているのか、安倍介入の時期からの推移を追ってみた。(大野和興)
◆安倍とそのお仲間によってつくられた巨大利権
『“悪夢の超特急”リニア中央新幹線』(旬報社刊)で日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞(2015年度)を受賞したフリージャーナリストの樫田秀樹さんが、JCJの機関紙『ジャーナリスト』1月25日号に寄稿した文章から、問題の核心を抽出してみる。樫田さんは東京地検特捜部の捜査の注目点は、「地検が果たして『リニア計画への3兆円の財政投融資』絵を誰が描いたかまで究明するか」どうかにある」と指摘する。談合事件を生んだ根っこはここにあるというのだ。
JR東海によると、リニアに建設費は9兆円に上る。このうち第一期の品川―名古屋間は5・5兆円となる。樫田さんに計算では、ドル箱東海道新幹線の収益をもってきても5.5兆円には3兆円が不足する。借りればいいではないか、と多くの人が思う。なにしろJR東海なのだから。ところが2015年度末のJR東海の純資産額は2兆円強しかない。つまり、3兆円借金しようにも担保がないのだ。銀行融資はむずかしい。
しかも、新幹線工事は近年どこも当初予算の倍以上かかっている。そこでどうしているかというと、新幹線の場合、国と自治体が建設費を出し合い、独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、機構)」が建設し、竣工後にJR各社は機構に毎年「線路使用料」を払う仕組みになっている。だが、リニアはJR東海の自己資金でやると、2007年に葛西敬之名誉会長(現)がぶち上げた。
さてどうするか。そこで登場するのが安倍首相である。2006年6月、安倍首相が財投ぬよる3兆円の支援策を打ち出した。安倍政権は「機構」の法改正を行い、財投資金でリニアの工事を発注できるようにした。安倍・葛西は右翼仲間で、葛西は安倍仲良しグループの一員でもある。「機構」は法改正直後から5回に分け、3兆円を無担保、30年据え置きという破格の条件でJR東海に貸し付けた。と樫田さんは指摘する。
◆安倍官邸の粛清人事か
国家が後ろ盾について、税金を投入する仕組みがつくられたのだから、建設費がどこまで積みあがっても、取りそびれはない。大林組、大成建設、清水建設、鹿島というスーパーゼネコンによる巨大利権分捕りあいが、今回のリニア談合事件の背景なのだ。
特捜の動きが始まった後も奇妙な出来事があった。 日刊ゲンダイ電子版(2018年1月19日)は、捜査の動きがぱたりと止まり、このままでは国会議員に行き着くどころは談合の追及さえ怪しくなった、という記事を掲載した。同紙はその背景に安倍官邸による検察への人事介入があった、と指摘する。少し長いが引用する。
「特捜部が独占禁止法違反容疑で、鹿島と清水建設の本社を家宅捜索し、強制捜査に乗り出したのが昨年12月18日でした。実は、そのわずか1週間後の12月26日に、当時の林真琴刑事局長を名古屋高検検事長に転出させる人事案がこっそり閣議決定されたのです」「林刑事局長と東京地検の森本宏特捜部長のラインでリニア疑惑を徹底追及すると見られていた直後に、林刑事局長が突然、飛ばされた。役職的には栄転とも言えますが、検察内では『林さんは虎の尾を踏んだ』ともっぱらでした。つまり、官邸が『これ以上、手を突っ込むな』と牽制する意味で粛清人事を行ったと見られているのです」 法務省の黒川弘務事務次官は、同省の官房長時代、大臣室でわいろの札束を懐に入れたということで問題になった甘利事件を握りつぶして次官の地位を射止めたという人物だけに、あながちうがった話ではない。
いずれにしろ、安倍のお友達がらみの巨大利権構造だけに、この事件は目が離せない。
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転載について
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