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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2018年09月11日15時21分掲載
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労働問題
<武建一語り下ろし>関生型労働運動とは何か(3)生コン産業の産業構造と収奪の仕組み
関生の闘いを理解していただくためには、生コン産業とはどういう産業かについてお話しなければなりません。生コンとは、練り合わせられてまだ固まっていないコンクリートのことですが、これは戦後生まれの産業です。生コン工場ができる前は、建設現場に水•セメント•砂•砂利をもっていって、それをスコップ混ぜ合わせるという工法でした。この工法では品質が安定せず、大量生産もできません。それで、アメリカとドイツから機械を輸入して生コン工場が作られました。当時は高度成長に向かう時期で、インフラ整備が必要な時代でしたから、全国津々浦々に生コン工場ができた。今、生コン工場は三000ですが、一時は六〇〇〇近くあって、二億リューベ (1リューベ=1000リットル)生産しました。今はその半分位です。
生コンは先ほどいいましたようにセメントと砂、砂利、水を攪拌して製品をつくります。原料のセメントは、セメントメーカーが高値を押し付けてきます。また製品の主要な販売先であるゼネコンは、生コンを買い叩きます。生コンを製造している業者は大部分が中小企業で、大企業の挟撃されているわけです。その中で生コン業界が生き残るためには、セメントを適正価格で仕入れ、ゼネコンには適正価格で売るしかない。そのために中小企業は結束するしかないわけです。
ですから関西では、価格交渉の目的で生コンクリート協同組合という組織にほとんど入って価格交渉をします。原材料のセメント運搬業者もバラ輸送協同組合を作っています。それから生コンを運搬するミキサーコンクリートがあります。これは近畿生コン輸送協同組合に入っています。大阪広域協同組合は製造業者の協同組合で、大阪府下一五○工場(組織率九九%が加入しています。
現場で打設をするときに圧送を行います。これらの業者が近畿圧送る協同組合を作っています。このほか、砂とか砂利とかダンプとか、いろいろな業界がありますが、ここは組織化が非常に遅れているので、いま言った業種に組織された団体が、我々労働組合と共同で大手企業と集団的な交渉を行っています。ここで決まった商品の価格や賃金・労働条件に労使関係のる企業は拘束されますが、未組織のところはそれをガイドインにして価格を決めることになります。企業と労働者の間は労使関係ですから、当然、経済的対立が生まれます。しかし、われわれは対立を薄めるやり方をつくりあげてきました。それは、労働者と中小企業が共通のテーマで団結し、大企業の収奪と闘い、適正な価格を決めさせる、というやり方です。その原資が労働者の賃上げなどに充てられる、そういう取り組みを実現しています。
■弱肉強食に替るシステムを目指す政策闘争を
先程、社会が壊れてきていると申し上げましたが、安倍政権のいわゆるアベノミクスは、巨大独占へ国民の資産を移転させようとするものです。その結果、中小零細企業の経営は危機に瀕しており、労働者の多くは非正規労働者とされ、不安定雇用の下に置かれて、ワーキングプアーと呼ばれる年収200万円以下の境遇に身を置く人々が多数を占めています。ブラック企業が横行し、過労死、自殺が増大しています。地域は荒廃して、少子高齢化の下での過疎化が進み、限界集落が至るところに生まれている。わたしたちは、これに替る社会システムを実現しなくてはいけない。そうしないととんでもないようなことが起きる。
今日の閉塞状態の下で、現実にかつては想像できなかったような異様な事件が起きています。先ずは何よりも、この閉塞状態を打開する闘いが不可欠です。生コンではこの闘いを「政策闘争」と呼んで実践してきました。政策闘争とは,多数の中小企薬と労働者が団結して、大企業の収奪と闘うことであり、その目的をひとことでいえば「共生-協働」型の社会をつくることです。
多くの人がこういう闘いが必要だという思いを共にしているのですが、しかし、残念ながら、九九・七%を占める中小企業は、お互いの間に大した差がないのに、大企業や権力によって分断されている。だから、大企業が好き勝手なことをしている。これを打開するには団結あるのみです。
■組合潰しから中小企業と労組の協力へ
次に、われわれの運動の歴史のなかで、実践してきた重要な闘いの成果をお話ししたいと思います。生コン産業が誕生したのは、高度成長期に向かう時期で 仕事が一杯ある好況期でした。資本の力とは、資本を集中•集積する力のことだとわたしは思いますが、好況期には中小企業にも資本の集積力があり、お互いが競争しあいます。そのためには労働組合は邪魔になり、組合つぶしが横行します。 しかし一九七〇年代になると、仕事がなくなって大企業は中小企業に矛盾を押し付けるようになる。大企業と中小企業の利害対立が深まります。その結果、個別の企業の枠を超えて中小企業が団結し、労働者とも団結して独占資本と対抗するという方向に運動が発展して行くわけです。こうして、低成長時代における中小企業相互、中小企業と労働者の連携が生み出されてきたわけです。
■実利と結びついた協力関係の構築
企業間で競争しない仕組みとはどういうものか。具体的には、個社で営業しないで「共同受注•協同販売•シェア運営」という三位一体の運営をする、ということです。そうすることによって,個社による企業間競争をとめることができる。それは、労働者の労働条件を安定させることにも繋がります。
われわれの労働組合は中小企業に対してどういう立場をとってきたかというと、先ほど述べましたように「一面闘争、一面共闘」です。中小企業には、労働者を搾取するという労資の対立的側面と、独占資本から収奪されている、という労働者と共通の側面、その二面性があります。ですから、わたしたちは、不当労働行為とか、人権侵害といった対立的な面がでてこない限り、中小企業と共闘して行く、そういう立場で中小企業と接してきたわけです。
中小企業の経営者の人たちは、労働組合と連携したら経営が安定するとか、利益が上がるとか、実利がなければ、言葉だけでは納得しょせん。具体的にいいますと、中小企業の経営を左右するセメント会社は、資本金二百億円とかの大企業です。また、取引先はゼネコンですから、これはもっと巨大企業です。こうした相手と対峙して、実利で結果を出すことが求められます。業界ではセメントの価格をトン当たり五〇〇〇円値上げするという動きがあります。私たちはこれを絶対に認めなかった。大阪府下だけでも年間二〇〇万トン、近畿全体では三〇〇万トンのセメントが生コンで生産され取引されますから、これにかける五〇〇〇円が中小企業の利益になります。生コンの売値ではかつては一リューベ一万円切るかどうかという価格だったものを、団結して交渉することによって、一万五三〇〇円にすることができぼした。大へんな成旲です。この成果を、大阪だけでなく、京都、和歌山、奈良、滋賀、三重、兵庫の中小企業にも拡大することができました。
労働条件についてみますと、かつて生コン業界の労働条件は奴隷的でした。私がこの仕事を始めた頃には、賃金は安いし、休みは正月の三日しかなった。正規の労働時間が法定月一二〇時間なのに、残業を月三〇〇時間した人もいました。いまでは、労働時間も適正化され、年一二五日の休日があります。こういうふうに集団交渉で、賃金、労働時間など、労働条件の溌躍的向上をかちとってきました。それだけでなくて、企業にとっても、集団交渉で、めざましい改善,向上の成果をあげることができたのです。それなくしては、今日のような組織化はできなかったでしょう。 (続く)
武建一(たけ・けんいち 連帯労組関西地区生コン支部委員長)
(季刊『変革のアソシエ』33号から)
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