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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2018年10月19日13時56分掲載
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農と食
地域と運動の現場から考える種論議(下)遺伝子組み換え作物の栽培を許してこなかった市民 大野和興
種子法による種の公的管理が、時代の要請によってコメの市場競争と育種合戦をつくり出した、と述べた。こまでくるともう種子法廃案まであと一歩である。そして案の定廃止になった。ではどうするのか。先にこれからの議論の視点の一つとして「種子と国家と資本と人・地域の関係をどう整理するか」と書いた。今の種子法論議は「種子の公的管理か資本の管理か」という二者択一の枠で行われている。「公」には権力が伴う。公的管理の主役はいうまでもなく「国」である。育種の国家管理については、私たちはコメ品種を先兵とする朝鮮半島と台湾への植民地侵略という苦い歴史をもっている(このことに触れる余裕はないので、興味ある方は本誌掲載の大野「種とナショナリズム」を読んでいただきたい)。
いま必要なのは、資本か国かという二者択一の単純な議論ではなく、「種は誰のものか」という種論議の本質に立ち返ることだろうと考えている。「種と人・地域」の関係性を種子法論議に入れ込むのだ。それを「共」と呼ぶことにする。首都圏の西のはずれの山間地帯、秩父に住んで、仲間と雑穀自由学校(主宰西沢江美子)をやり、もともとこの地で作られていたはずのアワやキビ、ヒエなど雑穀や地種のダイズ、イモ、戦前作出されたパン用小麦などを作っている。そのために、秩父の山と谷の村を訪ね、山村の命をつないできた豆やイモの話を聞き、種を分けてもらったりという動き方を続けている。
なぜこんな話をするのか。現在の種論議の中で百姓と地域の姿が見えてこないからだ。種は誰のものか、と問われればちゅうちょなく「百姓のものだ」と答える。その百姓不在の運動にどこか違和感も覚える。百姓がみえないから地域も見えない。本来、農業と風土は切り離せない。地域には地域特有の風土がある。地域の風土が地域の農業をつくり、人びとの生きる糧を供給してきた。だから、その風土が育てる農業もまた、地域ごとに異なる。耕し方も作り方も品種も、それぞれ地域特有のものがある。品種の場合、それを地種(じだね)といった。そこから地域特有の食材が作られ、それが地域特有の食文化を生んだ。農業も食も食文化も、だから多様なのだと思う。秩父の険しい山と深い谷筋がつくり出した複雑な地形、そこに住む人びとが共同の力で育ててきた多様な農と食の文化に接していると、制度論に偏りがちな今の種子法論議の限界が見えてくる。
◆市民の力
もう一つ、書いておかなければならならないことがある。種子法がなくなると日本の種子はモンサントなど多国籍企業に押さえられ、日本の田んぼはたちまち遺伝子組み換えイネに埋まってしまうという言説が広がってることについてだ。この説はまちがいといえないまでも、重大な欠陥がある。
確かに現在世界の種子市場は巨大農薬・種子企業による寡占化の状態にある。ダウ・ケミカルとデュポンが対等合併した「ダウ・デュポン」、シンジェンタの買収した中国化工集団ChemChina、そして最近のバイエルによるモンサント買収。この三社で世界の種子市場で約6割のシェアをもつとされている。その巨大な圧力と政府のゆるふん規制のおかげで、日本は遺伝子組み換え食品の世界有数の輸入市場となっている。
だがその一方で、国内での遺伝子組み換え作物の栽培は行われていない。消費者と生産者が力を合わせての運動が、それを許さないで来たからだ。「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」代表の天笠啓介さん(科学ジャーナリスト)は多岐に渡るその運動を次のように整理している。GM(遺伝子組み換え)稲の栽培阻止、GMOフリーゾーン運動、大豆畑トラスト運動、GM食品表示運動、検査運動、GMナタネ自生調査運動、カルタヘナ法改正運動、自治体規制条例制定運動、国際連帯活動、等々だ。(『農民新聞』2018年6月15日号)
これらの運動は、天笠さんと並んで筆者も共同代表を務める日本消費者連盟が運動の中軸を担ってきたし、これからも運動を弱めるつもりは毛頭ない。種子をめぐるこれからの運動は、地域で種を守り続けてきた百姓、この列島で遺伝子組み換え作物の栽培を許してこなかった市民の存在を認め、信頼することから始まるのだと考えている。
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