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2020年01月09日22時56分掲載
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人権/反差別/司法
極端に少ない日本の犯罪人引き渡し条約締結国 問題は基本的人権をないがしろにした日本の刑罰制度にある
カルロス・ゴーン氏のレバノン逃亡をきっかけに、日本は世界中で二か国としか犯罪人引き渡し条約が締結できていないという事実が浮き彫りになった。日本が他の国と比べ極端に少ないのはなぜか、海渡雄一弁護士が自身のFacebookでその理由を明らかにしている。一言でいって、日本は人権が守られていない国とみなされているということのようだ。海渡弁護士の解説を紹介する。(大野和興)
まず世界の犯罪人引き渡し条約の締結状況について。2016年現在、フランスは96か国、イギリスは115か国、アメリカは69か国、韓国は25か国と犯罪人引渡し条約を締結している。それに対して日本は2016年現在、アメリカ(日米犯罪人引渡し条約、1980年発効)と韓国(日韓犯罪人引渡し条約、2002年発効)の2カ国しかない。
なぜ日本は締結国が極端に少ないのか。海渡氏は「日本が死刑存置国であることが大きく影響しているようです」と述べている。海渡氏は以下のような例を挙げている。 「犯罪人引渡のための地域的な条約であるヨーロッパ犯罪人引き渡し条約にヨーロッパだけでなく、韓国や南アは加入しているのに、日本は加入できていません。韓国は事実上の執行停止国、南アは廃止国です。日本はヨーロッパ評議会のオブザーバー加盟国なのに、この条約に加盟できない理由は死刑以外には考えられません」
問題は、基本的人権に関わることなのである。 「犯罪人引渡の問題について考えるには、罪を犯した者の処罰を確保するという問題と、犯罪人の引き渡しによって基本的人権の侵害を引き起こしてはならないという問題とを総合的に考慮しなければなりません」と海渡氏。
海渡氏は前田直子「犯罪人引渡における人権基準の発展 ―ヴァイス対オーストリア事件(第2)」(自由権規約委員会、2012年10月24日)」京女法学第4号)を引きながら、カナダが死刑存置国である米国に対し、犯罪人を引渡したことが自由権規約に反するのではないかということで問題となったいくつかの事件の経緯を紹介、「廃止国が、死刑制度存置国に対して、死刑が確定している犯罪人を引渡すこと自体が、真正面から生命に対する権利を保障した第6条1項そのものに違反するという判断にたどり着いています」と現在の国際的な流れを整理している。 そして現在は「自由権規約委員会(注)では、死刑制度だけでなく仮釈放の可能性のない終身刑を課される可能性があるということが規約7条に反する可能性があることを示唆するようになっています」と述べ、この流れはいっそう厳しくなっていることを指摘している。
ではなぜ日本と同じく死刑を存置している中国が、多数の国と犯罪人引渡のための条約を締結しているのか。 「中国は、極めて活発に犯罪人引渡の合意を形成しようとして、2年位前の報道では条約締結は約30か国に達するとされています。まだ、締結には至っていませんが、日本との間でも条約の締結交渉が重ねられてきました。これらは、中国政府の必死の外交努力によるものであり、それでも締結されたのは約30か国にとどまっているわけで、死刑や非人道的な刑罰の存在が犯罪人の引渡条約が締結できないことの支障となっているという見立ては誤っていないと考えます」 「犯罪人の引き渡し条約の締結を促進するためには、死刑制度を廃止し、人権が保障され、罪を犯した人々の社会復帰を容易にするための制度改革を進めることが必要不可欠です」
問題は、基本的人権の保障が未熟で遅れている日本の現実にこそあるのだということがわかる。
(注)自由権規約人権委員会(United Nations Human Rights Committee)は、国連総会で採択された市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)28条に基づき、同規約の実施を監督するために設置され、1976年から活動を開始した国際連合の機関。
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