・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・市民活動
・検証・メディア
・国際
・核・原子力
・アジア
・環境
・難民
・中東
・文化
・イスラエル/パレスチナ
・欧州
・中国
・コラム
・農と食
・入管
・反戦・平和
・教育
・米国
提携・契約メディア
・AIニュース


・司法
・マニラ新聞

・TUP速報



・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus

・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2025年02月18日
・2025年02月16日
・2025年02月15日
・2025年02月14日
・2025年02月10日
・2025年02月09日
・2025年02月08日
・2025年02月07日
・2025年02月05日
・2025年02月03日
|
|
2024年12月05日20時57分掲載
無料記事
印刷用
イスラエル/パレスチナ
アムネスティ、ガザにおけるイスラエルの集団殺害(ジェノサイド)を立証する詳細な調査報告を発表
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは2024年12月5日 、ガザのパレスチナ人に対するイスラエルの行為は「ジェノサイド」だと結論付ける報告書を発表した。同報告書はジェノサイドを構成する数々の行為を詳細に記録し、法的分析を行っている。アムネスティは発表にあたって「この残虐行為を見過ごすわけにはいきません。アムネスティの調査情報が、未曽有の人道危機を終わらせる一助になることを切に願っております」と述べている。報告書は長文に渡るが、その全文を紹介する。(大野和興)
================
イスラエルのガザのパレスチナ人に対する行為はジェノサイド
アムネスティは、イスラエルが占領下のガザ地区でパレスチナ人に対し、ジェノサイド(集団殺害)を行い、今も続けているという結論を得る上で十分な根拠を得て、本日、報告書として発表した。
2023年10月7日に対するハマス主導のイスラエル南部への攻撃で多数の死者が出たことを受けて開始されたイスラエルの軍事攻勢では、ガザ地区のパレスチナ人に対してあからさまに、継続的に、そしてまったく責任を問われることもなく破壊と地獄の世界を作り出した。この攻撃は、ガザのパレスチナ人に対するジェノサイドである。
アムネスティの調査で、ガザのパレスチナ人を破壊する意図をもって、ジェノサイド条約で禁止されている行為を行ったことが明らかになった。これらの行為には、殺害、身体的、精神的に重大な危害を加える、肉体の破壊をもたらすことを意図した生活環境を課すことなどが含まれる。
イスラエルは何カ月もの間、ガザのパレスチナ人を人権と尊厳に値しない人間以下の集団として扱い、彼らを肉体的に破壊する意図を示してきた。イスラエルの行為がジェノサイドだというアムネスティの指摘は、国際社会への警鐘であり、国際社会は、直ちにジェノサイドを停止させなければならない。
この時期にイスラエルに武器を供与している国は、ジェノサイドを阻止する義務に反している上、ジェノサイドに加担している可能性を認識しなければならない。
イスラエルに影響力を持つすべての国、米国やドイツのような主要武器供給国のみならず、他のEU加盟国や英国なども、ガザのパレスチナ人に対するイスラエルの残虐行為の即時停止に向け、直ちに行動を起こす必要がある。
この2カ月間、ガザ地区北部では特に状況が深刻化し、孤立した住民は、絶え間ない爆撃を受け、人道支援が妨げられる厳しい状況の中で、飢餓、強制移動、生命の危機に直面している。
アムネスティの調査によれば、ガザのパレスチナ人に回復不能な被害を与えていることを十分に認識しながら、イスラエルは何カ月も、ジェノサイド的な攻撃を続けてきた。壊滅的な人道状況に対する数多の警告や、ガザ民間人への人道支援を可能にする即時措置を命じた国際司法裁判所の法的拘束力のある決定を無視して、イスラエルはこうした行為を続けてきた。
イスラエルは、ガザでの行動は合法であり、ハマスを根絶するという軍事的目標によって正当化されると繰り返し主張してきた。しかし、ジェノサイドは、軍事目標との共存が可能であり、ジェノサイドが唯一の意図である必要はない。
アムネスティは、イスラエルの行為を仔細に、また総合的に検証した。その際、繰り返されている攻撃と複数の同時発生的攻撃を検証した。死傷者の規模や深刻さ、長期にわたる破壊行為について、また、死傷者と建造物の破壊の規模とその深刻さを検証した。当局者の発言も分析したところ、戦闘の指揮官がジェノサイド条約の禁止行為を発表したり、禁止行為を求めたりすることが多いことが明らかになった。
パレスチナ人の排除、アパルトヘイト、違法な軍事的占領というこれまでの対応を考えると、合理的な結論は一つしかない。イスラエルの意図はガザのパレスチナ人を肉体的な破壊である。ハマス壊滅という軍事目標と同時に進められている場合であろうと、あるいはその目標を達成するための手段として行われている場合であろうと、結論は同じである。
昨年10月7日にハマスや他の武装組織がイスラエルに対し行った残虐行為や人質を取る行為は、ガザのパレスチナ人に対するイスラエルのジェノサイドを正当化するものでは決してない。
国際法学では、保護されるべき集団を破壊しようとする試みが成功するか否かにかかわらず、その試みだけでジェノサイドが成立するとみなされる。集団を破壊する意図を持って禁止された行為を実施することだけで十分である。
アムネスティは、昨年10月7日から今年7月初旬までの9カ月間の、イスラエルによるガザでの違反行為を詳細に検証した。パレスチナ人の被害者や目撃者、ガザ当局、医療従事者など212人に聞き取りや現地調査を実施し、衛星画像などの視覚的情報やデジタル技術で収集された情報を分析した。また、イスラエル政府や軍の高官、イスラエルの公的機関の発言も分析した。
アムネスティは何度もイスラエル当局と調査結果を共有し、コメントを求めたが、この記事の発表時点では当局からの回答は得られていない。
■前例のない規模の攻撃と破壊
昨年10月7日のハマスによる攻撃に続くイスラエルの対応は、ガザの住民を壊滅的な状況に追い込んだ。軍事的攻撃により、今年10月7日までに13,300人以上の子どもを含む42,000人以上のパレスチナ人が死亡し、97,000人以上が負傷した。専門家によれば、今世紀で最悪の規模と短時間での破壊であり、都市全体を壊滅させ、重要なインフラ、農地、文化的、宗教的施設を破壊した。その結果、ガザの多くの地域で人が住めなくなった。
モハメッドさんは今年3月、家族とガザ市からラファに避難し、今年5月に再び避難を余儀なくされる中で生き延びてきた。その過酷な状況をこう語った。 「ここデイル・アル=バラは、まるで黙示録のようだ。子どもたちを虫や暑さから守らなければならないし、清潔な水もトイレもない。そのうえ爆撃が止むことがない。ここでは、自分たちは人間以下の存在のようだ」
イスラエルはガザの人びとの生活を厳しく制限し、飢餓や栄養失調、病気がまん延する状況を作り出し、パレスチナ人を徐々に死に追いやっている。また数百人のガザのパレスチナ人を連絡を絶った状態で拘束し、拷問、虐待を加えた。
アムネスティが調査したイスラエルの複数の行動の一部は、個別に見れば国際人道法や国際人権法に対する重大な違反にあたる。しかし、イスラエルの軍事作戦の全体像とその政策や行為の累積的な影響を考慮すると、ジェノサイドの意図こそが唯一の合理的な結論である。
■故意の破壊
ガザのパレスチナ人を肉体的に破壊するというイスラエルの意図を明らかにするために、アムネスティは、イスラエルのガザにおける行動全般を分析し、特にイスラエル政府や軍の高官によるパレスチナ人の人間性を否定するような、あるいはジェノサイドを扇動するような発言を分析した。また、イスラエルのアパルトヘイト体制、非人道的なガザ封鎖、57年にわたるパレスチナの領土の違法な軍事的占領も考慮した。
また、結論に至る前に、イスラエルは、軍はハマスなどの武装組織を合法的に標的にしているという主張や、その結果生じた類を見ない破壊や支援の否定は、ハマスなどの武装集団による違法行為(たとえば、民間人の中への戦闘員の配置、支援物資の転用など)によるものだという主張を検証した。そしてアムネスティは、これらのイスラエルの主張には信憑性がないと結論づけた。ハマスの戦闘員が人口密集地内や密集地の近くにいるからといって、イスラエルは、民間人に無差別な、あるいは過剰な攻撃を避けるためにあらゆる予防措置を取るという義務を免れるわけではない。イスラエルは繰り返しこの義務を果たさず、国際法上の犯罪を数多く行ってきた。ハマスの行動を理由として、イスラエルの対応を正当化することはできない。また、イスラエルが人道的援助を制限したのは、援助物資が別の目的に使われるおそれがあるからだと主張するが、アムネスティは、このイスラエルの主張を裏付ける事実を見つけることはできなかった。
アムネスティは他の議論も検証した。例えば、イスラエルは無謀な行動をとっている、あるいは、イスラエルは単にハマスを壊滅させたいだけでその過程でパレスチナ人が破壊されても気にかけていない、ジェノサイドの意図というより、パレスチナ人の命を冷淡にも無視しているだけだ、という論調だ。
しかし、イスラエルがパレスチナ人の破壊をハマス壊滅の手段とみなしているのか、その目標を達成する上での副産物とみなしているのかにかかわらず、パレスチナ人を使い捨て可能で、人としての考慮に値しない存在とする見方そのものが、ジェノサイドの意図があることを示している。
アムネスティが確認した多くの違法行為の背後には、それらの行為を呼びかける政府や軍の高官らの発言があった。アムネスティは、昨年10月7日から今年6月30日までの間に出されたイスラエル政府と軍関係者らの発言102件を検証した。これらの発言は、パレスチナ人を人とみなさず、ジェノサイド行為などの犯罪を支持または正当化していた。
アムネスティは、一連の発言の中から攻撃を指揮する高官の22の発言を調べたが、いずれもジェノサイドを呼びかけ、あるいはジェノサイドを正当化しているようで、ジェノサイドの意図を示す直接的な証拠になった。これらの発言はしばしば繰り返され、現地のイスラエル兵士たちにも使用されていた。アムネスティが確認した音声や映像資料には、兵士たちがガザを「消し去る」とか「住めなくする」と呼びかけ、パレスチナ人の家屋やモスク、学校、大学の破壊を喜ぶ様子を撮った映像もあった。
■殺害、肉体・精神に対する重大な危害
アムネスティは、昨年10月7日から今年4月20日にかけてあった15回の空爆を検証し、パレスチナ人に対する殺害や、肉体的・精神的に重大な危害を加えるというジェノサイド行為を確認した。これらの空爆で子ども141人を含む少なくとも334人の市民が亡くなり、数百人が負傷した。また、確認したいずれの空爆も、その標的が軍事施設だったことを示す根拠を確認することはできなかった。
今年の4月20日、ラファ東部の空爆では、子ども16人を含む3世代のパレスチナ人一家が就寝中に亡くなった。この犠牲はイスラエルの空爆のごく一部にすぎないが、民間人や民間施設への直接攻撃や無差別攻撃を繰り返していることを示している。また、これらの攻撃に、民間人から多数の死傷者を出す狙いがあったことが伺える。
■肉体的な破壊をもたらす生活環境
イスラエルは、ガザのパレスチナ人に、時間をかけて彼らを破壊させることを狙った生活環境を強要してきた。民間人の生存に不可欠なインフラなどへの攻撃や破壊、ガザ市民ほぼ全員を強制的に移動させるために繰り返してきた「避難」命令、そして、水や電力、医療などのサービス、人道支援などの妨害、という3つを同時に行うことで、こうした生活環境を生み出していた。
昨年10月7日以降、イスラエルはガザを全面封鎖し、電気、水、燃料の供給を止めた。9カ月間封鎖を維持し、エネルギーの利用を厳しく制限し、ガザ地区内の人道支援を促進しなかった結果、すでにあった人道危機はさらに悪化した。全面封鎖は、家屋、病院、水や衛生施設などの甚大な被害、大規模な強制移住とあいまって、深刻な飢餓を引き起こし、病気のまん延につながったした。特に幼い子ども、妊婦、授乳中の女性が受けた影響は大きく、長期的な健康への影響が懸念されている。
イスラエルには、ガザの人道状況を改善する機会が何度もあったにもかかわらず、1年以上にわたり、ガザへの検問所などを封鎖・規制し、支援物資の輸送を妨害するなどの措置を取ってきた。
イスラエルは、繰り返し「避難」命令を出すことによって、190万人近いパレスチナ人(ガザの人口の9割)を、ますます少なくなる土地に強制的に移動させ、非人道的な状況に追いやってきた。複数回にわたる強制移動で、多くの人びとが職を失い、深い心の傷を負った。特に、ガザの住民の約7割は、1948年のナクバでイスラエルによって追放された町や村からの難民やその子孫であるため、その影響は大きい。
急速な生活環境の悪化にもかかわらず、イスラエル当局は、避難民の保護や基本的ニーズを満たすような措置の検討を拒否してきた。
イスラエルは、避難民がガザ北部の自宅への帰宅や、パレスチナやイスラエルの他の地域への一時的な移動を認めず、国際法に基づく権利を否定してきた。イスラエルは、ガザのパレスチナ人に安全な逃げ場がないことを知っていながら、そうしたのだった。
■ジェノサイドに対する責任追及
国際社会が、ガザでのイスラエルの残虐行為を終わらせるよう圧力をかけることを1年以上も怠り、停戦呼びかけを遅延させ、武器の供給を続けたことは、恥ずべき重大な失態であり、今後も私に共通の良心に重くのしかかるだろう。
各国政府は、ジェノサイドを終わらせる力がないような振る舞いをやめるべきだ。このジェノサイドは、イスラエルの国際法違反を何十年にもわたって許してきたことがもたらしたのだ。各国は、遺憾の意を表明するだけでなく、強力で継続的な国際的行動を取る必要がある。たとえ、ジェノサイドの認定がイスラエルの一部の同盟国にとって不快であったとしても、それを乗り越えなければならない。
国際刑事裁判所が、ネタニヤフ首相とギャラント元国防相に戦争犯罪と人道に対する罪で逮捕状を発行したことは、被害者にとって長年の懸案だった正義の実現に向けた希望になる。国際社会は、国際刑事裁判所が指名手配している人物を逮捕し、引き渡すことで、裁判所の決定と普遍的な国際法の原則を尊重する姿勢を示さなければならない。
アムネスティは、国際刑事裁判所の検察官事務所に対し、ジェノサイドを捜査対象の犯罪リストに加えることを早急に検討し、またすべての国に対し、あらゆる法的手段で加害者を裁くよう求めている。ジェノサイドを犯したにもかかわらず、処罰を受けないなどということは、あってはならない。
一方でアムネスティは、パレスチナ武装組織に対し、人質全員を無条件で解放し、昨年10月7日の犯罪を行ったハマスなどの武装組織の責任を問うことも求めている。
また、国連安全保障理事会に対しては、国際法上の犯罪に深く関与しているイスラエルとハマスの幹部に制裁を科すことも要請している。
■背景情報
昨年10月7日、ハマスその他の武装組織はイスラエル南部に無差別にロケット弾を撃ち込み、800人以上の市民を含む1,200人を殺害し、市民223人を拉致し、兵士27人を拘束した。アムネスティはこの犯罪に関する調査報告書も発表する予定である。
昨年10月以来、アムネスティは、民間人や民間施設への直接攻撃、数百人の民間人を殺害した意図的な無差別攻撃、民間人への違法な集団懲罰など、イスラエル軍が犯した国際法上の複数の違反や犯罪を調査してきた。国際刑事裁判所検察官事務所に対しては、パレスチナにおける状況の調査を早急に進めるよう呼びかけてきた。さらに、即時停戦を求めるキャンペーンを展開している。
アムネスティ国際ニュース 2024年12月5日
|
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|





|