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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2025年05月19日20時13分掲載
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農と食
米価高騰もコメ不足も構造問題 戦後80年、食の基盤が崩れている
今年は戦後80年です。戦後体制を作ってきた仕組みがいたるところできしみ、崩れています。そのひとつに主食のコメの問題があります。コメに異変が起こっていることが表面化したのは24年夏からですから 、そろそろ1年近くになります。小売段階で2倍に高騰したコメはその後もじり高を続け、品薄感も続いています。そればかりでなくこの傾向は新米がとれるこの秋の以降も続くという一部流通業界筋の見立てさえ出ています。消費者にとってコメは安いものというのが当たり前の光景でした。うって変わった状況が目の前にあります。一体何が起こったのか、以下見ていきます。(大野和興)
◆置賜盆地で
筆者がコメに何かが起こっていると感じたのは、24年の春頃でした。山形県南部のコメどころ、置賜地域の村を取材で歩いていた時です。置賜は山に囲まれた盆地で、おいしいコメの産地です。古い友人であるコメ農家をふらりと訪ねたら、馴染みの精米業者に電話している最中でした。売るコメがなくなったので、予約してある精米業務をキャンセルしたいという電話でした。びっくりして、「どうしたんだ」と聞くと、最近「コメを買いたい」という注文が殺到して、もう売る米が底をつきそうなんだ ということでした。
まだ当時の常識では、コメはだぶついていて、農家は四割減反を強いられ、それでも生産者米価は下がり続ける、というものでした。しかし私はいつか突然コメが不足する事態が起こるのではないかと考えていました。政府のコメ需給計画を単年度ベースでみると、需要量に対して供給量は少ない状態が続いていたからです。
◆綱渡りのコメ需給計画
農水省が発表している主食用コメの需給関係によると、令和5/6年の需給実績は、生産量661万トン、需要量705万トンで、差し引き44万トン供給不足です。期首在庫量の197万トンでその供給不足を補い、年度末に153万トン余剰を出して次年度に繰り越しています。
もし気候変動や大災害があれば直ちに不足に陥る危険性をはらむ綱渡りの需給見通しの中で、政府のコメ政策が組み立てられていることがわかります。なぜこのような需給計画を政府は行っているのか。コメ消費量が1年で10万トン程も減っているという現実があるからです。このことを前提に、政府はコメが過剰に陥らないよう生産調整(いわゆる減反)し、生産量を抑えているのです。
◆低賃金低農産物価格
ぎりぎりの需給見通しでコメ政策を進めながら、米価はこの30年、下がりっぱなしでした。1990年代半ばまで、集荷業者が生産者から買い入れるコメの価格は一般銘柄で60キロ2万円前後でした。魚沼産コシヒカリなど有名銘柄はプラス2000円から3000円。それが2000年代に入ると、1万8000円、1万000円と下がり、2000年代半ばには1万5000円になり、2010年代に入ると1万円そこそこまで下がり、コロナ下の需要減で1万円を切りました。
この値動きは、労賃が下がり続けた労働者の”失われた30年”とみあいます。しかし労賃は米価のように半分にはなりませんでした。なぜこんなことになったのか。理由は三つあります。
第一の理由は低賃金です。資本家は賃金を低く抑えたい。そのためには労働力の再生産コストを低くする必要がある。食料費は労働力再生産費の主要な費目です。ここを抑えるには農産物価格を切り下げればよい。こうして「低賃金低農産物価格」という命題が成立します。この30年、闘わなかった労働組合の責任は重大です。
◆農民は絶滅危惧種に
実は、労働者が実質賃下げを容認したのと同様、農民も農産物価格闘争を放棄していました。これが第二の理由です。理由は簡単です。食料を生産し闘う主体が消えていっていること。次の数字をみていただければわかります。
年間150日以上農業に従事しているこの国の中核的農民のことを基幹的農業従事者といい、2010年に205万人いました。それが10年後の2020年には136万人と約70万人減ってしまいました。2030年には83万人。2050年には36万人になると推計されています。この基幹的農業従事者の70%が65歳以上層で占められています。平均年齢は68歳。これは2020年時点での数字ですから現在時点では確実に70歳を超えているはずです。
耕す人がいなくなって農地も減り、2020年には437万haあった農地は2030年には392万ha、2050年には304万haとなると予測されています。その多くは耕作放棄地になります。
農産物の低価格と高齢化によって、農家は雪崩をうったように減っています。高齢化で農業から離脱する農家が増えていることに加え、農業を継いでも生活できないということで次世代農家が出てこないのです。このことを称して「いま農家は絶滅危惧種になった」という人がいます。
◆大規模農業も限界
個別農家はそうかもしれないけど、大規模化すればやっていけるはずだ、そうしないのは農家の責任じゃないのか、という人がいます。政府もそう考え、経営規模の大規模化と生産性の向上を政策の中心に置いてやってきました。しかし現実はどうか。
まだコロナがおさまっていなかった22年秋、やはりコメどころの山形・置賜地方で60ha前後の水田を経営する二つの農業法人を訪ねたことがあります。コロナで需要不振が続き米価が下がっているときだということもありますが、2法人ともこれまで集落に頼まれて田んぼを引き受け、経営規模を増やしてきたがこれからはコストがかかる田んぼは整理して規模縮小しなければ法人そのものがつぶれてしまうと深刻な表情で話してくれました。
米価高騰がピークだった今年1月、コメどころで大型稲作農家がたくさんい。る新潟・上越のコメ農民に電話で生産地の状況を聞きました。「今回のコメ不足でコメの販売価格が上がったが、農業をやめるという農家は一向に減らず、離農が続いている。しかもその動きは10ha規模の大経営の農家にも広がっている」という答えでした。
大規模農家は近隣の農家から土地を借りで規模拡大してきました。規模縮小したらこうした農地は元の地主に返されることになります。返された農地はどうなるか。土地を貸した農家は、自分に生産できなくなったから貸したのですから、返されても農地として使うことは無理です。こうして耕作放棄地がさらに増えていきます。
◆「市場に任せる」と政府はいう
農産物価格が低い第三の理由は政府の施策です。24年春、食料・農業・農村基本法が改定され、新しい基本法が動き出しました。その中で政府がこれから進める適正で合理的な農産物価格という概念が打ち出されています。需給と品質を適正に反映した価格こそがこれからの価格形成のあり方だというものです。いいかたを変えれば「市場に任せる」ということです。
この考え方を推し進めると、生産者は生産コストも賄えない低価格にも甘んじなければならないし、消費者は自分の収入では手が出ない高値にも我慢しなければならないことになります。そうではなく、生産者は自分自身と自分が作る農産物の再生産を賄うに足る価格を受けとらなければならないし、消費者は最低賃金あるいは生活保護基準の暮らしで購入できる米価でなければならない。差額が出れば(当然差額は発生します)、それは公共で負担しなければなりません。
◆令和の百姓一揆
「絶滅は嫌だ」と農民が動き出しました。25年3月30日、「令和の農民一揆」を掲げた行動が3月30日東京都内を中心に、全国15か所で行われました。東京での参加者は4500人。生産者、消費者の混成部隊がトラクター30台を先頭に都内をデモしました。行動は全国の有志が実行委員会を作り、主催したもので、実行委員会代表は山形・置賜百姓交流会の菅野芳秀さん。コメ作りと自然養鶏の農民です。東京の集合場所となった青山公園には、全国から駆けつけた農民を圧倒する消費者市民が集まり、デモ行進に参加した。
なぜいま百姓一揆なのか。代表の菅野さんは次のように語っています。「いま農民が雪崩をうったように離農、脱農している。農業では暮らしが成り立たないからだ。土地は放棄され、むらでは空き家が目立つ。このままではこの国から食料を作る人も土地も村も消えてしまう」。 一揆の基本的な要求は、欧米並みの所得補償を農産物価格に、というものです。
菅野さんは筆者の古い友人で現在75歳。最後の百姓世代が立ち上がったともいえます。筆者もデモに加わり歩きました。
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トラクターデモ、都内を行く
陸橋からデモに手を振る人たち


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