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2025年11月19日18時45分掲載
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人権/反差別/司法
「国内人権機関の設立は日本で暮らす全ての人に関係があること」藤田早苗さんが語る、日本に“国内人権機関”が必要な理由
国際社会では、人権侵害から市民を守るための「国内人権機関(英語名はNational Human Rights Institutionで『国家人権機関』と訳されることもある)」の整備が進められてきた。これらの機関は、政府から独立し、市民の人権を保護・促進する役割を果たす。世界ではすでに118の国・地域で導入されており、国連も各国にその設置を強く求めている。
しかし、日本には、いまだ独立した国内人権機関は存在しない。その理由は何なのか。 そして今、この状況を変えようとする市民の動きが静かに広がりつつある。
今回は、英国エセックス大学人権センターフェローの藤田早苗さんに、日本の人権課題の本質や、制度設計に向けた道筋について話を聞いた。
──初歩的な質問になりますが、そもそも国内人権機関とは、どのような組織なのでしょうか。
藤田さん:簡単に言えば、国民の人権を守るために、政府から独立して活動する機関のことです。私が把握している限りでは、現在118の国・地域に国内人権機関が設置されています。特に先進国では、国内人権機関の設置は当たり前ですし、日本はそうした国々と比べて、かなり遅れをとっています。
──法務省には「人権擁護局」という機関がありますが、それとはどう違うのでしょうか?
藤田さん:日本政府が言う「人権擁護局」はあくまでも政府組織の1つに過ぎませんから、最も重要な“独立性”が担保されていません。日本政府は長年、「日本には人権擁護局があるから国内人権機関は必要ない」といった主張を繰り返しているわけですが、その主張は完全に的外れです。
──そうした日本政府の消極的な態度が、国内人権機関の設置を遅らせている一つの要因となっているのですね。では、国内人権機関が設置されると、日本社会にどのような影響を与えるのでしょうか。
藤田さん:私は人権教育に大きな影響を与えると思います。日本の人権教育はいまだ国連が求める水準には達していないので、今後、日本で国内人権機関の整備が進めば、国際基準の人権教育が日本にも浸透していくはずです。また、日本には国際レベルの人権教育ができる人材も不足しているので、国内人権機関の設置が実現すれば、そうした“教える側”のトレーニングも進んでいくでしょう。
──なるほど。国内人権機関の設置は、日本の教育にも大きな影響を与えるのですね。
藤田さん:その通りです。ただ、国内人権機関という枠組みを立ち上げるだけで終わってはいけません。なぜなら、国内人権機関の独立性を担保するためには、国際人権法に精通した独立した専門家(例えば研究者、弁護士、NGOの関係者など)によるものにする必要があります。また、国連には、各国で設立された国内人権機関の連合体として〈国内人権機関世界連合〉(Global Alliance of National Human Rights Institutions:GANHRI)という機関があります。GANHRIは、世界各国に設置されている国内人権機関が、パリ原則に則った活動を行っているかどうか審査する役割を担っています。私は今年の6月下旬にスイスのジュネーブで開かれた「国連人権理事会」に参加した際、GANHRIのスタッフの方と話をする機会があり、今の日本の現状等について伝えました。
──日本はこれまで何度も国内人権機関を設置するよう、国連から勧告を受けていますよね。
藤田さん:そうです。日本政府は国連からいくら指摘されても、全く動き出そうとはしません。とはいえ、国内人権機関というのは、国連など外の世界から与えられるものではなく、日本で暮らす人々が自分たちの手で勝ち取るべきものですし、私たちはそうした声を上げる運動を起こしていかなければなりません。
──今年1月に国内人権機関をテーマとしたオンライン勉強会を開き、当日は200人以上が参加したとのことですが、日本でも徐々に関心が高まっているということでしょうか?
藤田さん:日本では15年ほど前にも国内人権機関の設置を求める運動が盛り上がりましたが、今回のように医療、福祉、教育、労働、環境など幅広い分野に従事する人たちに呼び掛け、運動を外に広げる取組はあまりしていなかったそうです。まずは一般の人たちが国内人権機関について理解を深める必要がありますから、200人もの参加者が集まったということは、前向きに捉えて良いと思います。先ほどご紹介したGANHRIのサイトには、国内人権機関の必要性などについて勉強になることがたくさん書かれていますから、GANHRIの和訳サイトを作り、多くの人たちにGANHRIの活動を伝えていく必要があります。
──最後に、日本で国内人権機関をつくるために、私たち市民には何ができるのでしょうか?
藤田さん:国内人権機関の設立は、日本で暮らす全ての人に関係があることです。日本には、原発、貧困、年金、外国人支援、性被害などに取り組んでいる団体がたくさんあります。当然、それはそれで素晴らしい取組ではあるのですが、彼らは自分たちが取り組んでいるテーマに注力し過ぎている側面もあると思います。各々の団体が一つのテーマに注力した活動ばかりやっていると、国内人権機関の設立に向けた取組は前に進みません。国内人権機関を作るには、そうした人たちが“横の繋がり”を持ち、互いに連携して取り組んでいかなければなりません。また、市民団体やNGOで活動されている方たちは、国連関係者へのロビイングを実施するため、国連人権理事会の期間中にジュネーブを訪れることがありますが、国内人権機関が設立されれば、そこに所属している人権の専門家が市民団体の意見を代弁してくれるようになりますから、わざわざ高いお金を払ってジュネーブまで足を運ぶ必要もなくなります。このように、国内人権機関の設立は、日本で暮らす多くの人々にとってプラスに働くのです。
声を上げる場所があり、守られるべき基準がある。そのあたりまえを実現するために、今こそ制度の“空白”を埋めるための議論とアクションが求められている。
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