・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・アジア
・国際
・文化
・環境
・欧州
・市民活動
・核・原子力
・中国
・コラム
・イスラエル/パレスチナ
・農と食
・入管
・反戦・平和
・教育
・米国
・みる・よむ・きく
・検証・メディア
・外国人労働者
・司法
・国際
提携・契約メディア
・AIニュース
・司法
・マニラ新聞
・TUP速報
・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus
・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2025年01月23日
・2025年01月22日
・2025年01月21日
・2025年01月20日
・2025年01月19日
・2025年01月18日
・2025年01月13日
・2025年01月11日
・2025年01月08日
・2025年01月07日
|
|
2009年08月11日00時08分掲載
無料記事
印刷用
文化
これで劇場はもう恐くない!読書ガイド <独断による現代劇 最短1週間コース> 村上良太
戯曲を読むことの価値が今、問い直されているのではないでしょうか。そこでいささか強引ですが夏休みを利用してできる1週間のメニューを仮に組んでみました。題して「これで劇場はもう恐くない!読書ガイド」。難解な現代劇ももう大丈夫・・・。
<金曜日> エドワード・オールビー作「動物園物語」
戦後アメリカNO.1の不条理劇(1958)です。一方的にしゃべりまくるばかりで全然コミュニケーションの成り立たない人間の悲劇が描かれています。インターネット時代の今、この劇の価値は一層高まっているように思えます。 舞台はニューヨークのセントラルパークのベンチ。登場人物は男2人だけです。この見ず知らずの二人の間で殺人が起きますが、殺人の動機は新聞のようなわかりやすい言葉では描けません。報道陣必読の戯曲です。
<土曜日> サミュエル・ベケット作「ゴドーを待ちながら」
「動物園物語」と並ぶ不条理劇といえば「ゴドーを待ちながら」(1952年)につきます。 二人のホームレスの男が1本の木しかない殺風景な場所でゴドーという男を待っている。ゴドーが来たらすべては救われるらしい。しかし、ゴドーは本当に来るのか?哲学的な内容を含みながらも表現はキャバレーの道化スタイルで、笑いが絶えない舞台が魅力です。 戦火のボスニアで上演されたこともあり、大恐慌の今はニューヨークやロンドンで上演されています。人間の悲惨があるところ、この劇もあります。
<日曜日> ベルトルト・ブレヒト作「肝っ玉おっ母とその子供たち」
ブレヒトは現代劇史上最大の革命家です。ブレヒトは演劇を見て涙を流したり、ため息を吐くのではなく、ドラマの背後に冷徹なメカニズムを見ることができる、そんな演劇を目指しました。「肝っ玉おっ母とその子供たち」(1939)は軍隊にくっついて酒や日用品を商う家族の物語。実に愛すべき母親が子供たちを次々に戦場に送り出し、最後は一人になってしまう、その母親の愚かさを描いています。ドラマと言えば、最後は解決したり、改心したりと適当に幕を引きがちですが、ブレヒトは愚かさをもって幕を引きます。テレビドキュメンタリー作家必読の戯曲です。
<月曜日> アントン・チェーホフ作「かもめ」
ロシア人劇作家チェーホフの「かもめ」(1896)は近代戯曲を一変させてしまいました。 舞台にドラマらしいドラマが特に起こらなくても、実に面白い劇が作れることを証明したのです。しかし、日本では悲劇ととらえ重いドラマに演出してきた歴史があります。一方、ロシアでは喜劇という解釈が主流です。チェーホフ劇を原作としたニキータ・ミハルコフの映画「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」(1977)で喜劇タッチの一端をうかがうことができます。チェーホフにはこの作品を含む4大戯曲があり、その影響はブロードウェイやハリウッドにも顕著です。
<火曜日> テネシー・ウイリアムズ作「ガラスの動物園」
テネシー・ウイリアムズはアーサー・ミラーと並んで戦後アメリカの2大劇作家の一人と言えます。二人は戦後すぐに頭角を現しながらも、作風はまったく違います。「ガラスの動物園」(1945)は大不況下のセントルイスの母子家庭を舞台に、倉庫で働いている息子トムの友人が訪ねてくる1夜の物語です。トムには足の悪い姉がいて、劣等感から世間から隠れるように生きています。そんな姉に友達を紹介しようとしますが、あっけなく家族の希望は砕かれてしまいます。しかし、そのやりとりの中に詩情と悔恨があふれ、一度読むと忘れることができない戯曲です。
<水曜日> アーサー・ミラー作「セールスマンの死」
ミラーはアメリカ社会派劇の第一人者と言われてきました。「セールスマンの死」(1949)はアメリカンドリームに囚われた男が、息子たちの人生を損ない、家族の幸せもつかむことができず破滅する物語です。アメリカ映画の多くは金をめぐる争いの物語ですが、この劇はそうしたアメリカ型幸福とは何なのかメスを入れています。アメリカが没落している今日、この戯曲には新たな解釈が可能かもしれません。
<木曜日> アルフレッド・ジャリ作「ユビュ王」
20世紀前衛芸術の源流こそ、アルフレッド・ジャリです。シュールレアリスムからベケット劇まで、その影響の大きさははかることができません。そのジャリの傑作が戯曲「ユビュ王」です。「ユビュ王」(1896)はポーランド王を殺し、王にのしあがったユビュが臣下を粛清し惨殺し、重税をかけ、ロシアには戦争をしかけます。ジャリの時代には一人のヒトラーもスターリンもいなかったことを思うと20世紀を先取りするかのような話です。しかしこの残酷戯曲は高校教師への風刺から生まれた喜劇・笑劇なのです。残念ながら日本では「ユビュ王」は絶版になったままですから図書館か古書店で探してください。
|
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
|