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2009年12月31日09時44分掲載
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2009年の回想:戦争・資源・新型インフル─エリートの貪欲が人類文明の危機に拍車 落合栄一郎
この年、日本とアメリカの政権交代があった。アメリカの新政権は期待に反して、前政権の政策をほとんど継承し、初めての非白人大統領であるにも拘らず、伝統的な「アメリカ第一」的精神は継承しているようである。これはノーベル平和賞受賞講演に濃厚に現れていた。日本の民主党新政権は、自民前政権の政策を基本的に見直す姿勢をみせ、予算案、公共事業の見直しなどかなり理にかなった政策を打ち出しているし、アメリカの軍事基地に関して、自民党下でのアメリカ一辺倒でなく、日本の独自性を主張しようとしていることについては、国民がこぞって後押しすべきである。優柔不断に見える態度不決定を指導性の欠如と見なすのは、不適当であろう。ただ単に、選挙公約を断固として履行するのみが、指導力の証左ではない。
アフガン戦争は兵力が増強され、しかも今まで参加していなかったNATO諸国も参加するようになったことは、非常に憂慮すべき事態である。それは欧米列強による中央アジアの石油・天然ガス資源を取り込む動きであり、しかも中国とロシアの間にくさびを打ち込む目論みも含まれているようである。アフガン戦争がますますパキスタン側へ拡大され、パキスタンを後押しする中国との関係が心配される。その上、アメリカはインドの核兵器を容認し、インド首相を国賓待遇するなどインドとの関係を強化しつつあることも、アフガニスタン・パキスタンを含む地域から中央アジアへの勢力拡大の思惑を表明している。 しかし、アフガン戦争にアメリカがなんらかの意味での勝利をおさめることは、殆ど不可能と見なされている。この戦争の拡大は、莫大な財政・人的資源の浪費を伴い、上のような意図を想定しない限り、理にかなうところは一つもない。
中華人民共和国は、建国60周年を迎え、盛大な式典を挙行し、経済発展、軍事力強化を誇示した。最近中国自身が、現在の軍事力はアメリカに次いで世界第2位であると発表した。中国は、13億の人口を抱え、欧米並みの経済発展を意図しているようであるが、これを実現するには、地球が幾つあっても足りない。 いわゆる先進国が、こうした中国の望みを押さえつけようとすることは、先進国自身がその生活レベルを低下・放棄しないかぎり不当である。こうした先進国のエゴイズムを先進国自身が反省しない限り、いわゆる発展途上国からの、例えば2酸化炭素排出規制への積極的参加は期待できない。事実、国連のCOP15では、発展途上国の反撥で、意味のある合意は得られなかった。
一方中国自身は、その経済発展のための資源獲得にあらゆる手段を用いている。欧米のような軍事力行使による進出ではないが、特にアフリカ諸国への経済進出は執拗をきわめている。欧米と中国の利益背反は、すでにアフリカでいくつかの衝突として現れている。以上述べた点は、国家レベルでのエゴイズムの現れである。すなわち国家レベルでのエゴイズムは、ますます国家間の緊張を高めている。
経済レベルでは、この年は前年のアメリカ発金融危機に由来する経済危機が世界中を駆け巡り、その負の影響から殆どの国は立ち直れないばかりか、悪化の一途を辿っているようにみえる。悪化は、しかし庶民の側のみであり、一部の経済エリートはますます富を増やしている。この問題は、したがって、富のより公平な分配で解決出来るはずであるが、エリートの貪欲(エゴイズム)が政治を巻き込んで、そのような解決策を阻んでいる。これは特にアメリカに於いて顕著である。この解決は革命によってしか実現しないのかもしれない。
金融危機は、住宅ローンその他を商品化し、ぼろ儲けを企んだが、住宅などの価値低下による躓きに端を発している。すなわちエリートとされる人間達の貪欲が引き起こしたものである。この年は、こうした一部のエリートや大企業の貪欲・エゴイズム(しゃにむな利潤追求)による犯罪的イヴェントが世界的規模で人々の健康や生死をも無視して行われた。それは、メキシコで発生したとされるスワインフルーなる現象である。
製薬・ワクチン製造業者が(世の中では公平と看做されている)科学者達を巻き込み、彼らが国連の保健機構を動かして、スワインフルーの「パンデミック」を演出したようである(これはEU議会で近々審議されることになっているので、結論するのは早急だが)。「パンデミック」が宣言されたため、多くの国でワクチンの予防接種が義務づけられたり、パニックに陥った人々は争ってワクチン接種を受けた。義務づけるには、政府によるワクチンの買い上げが前提になり、製薬・ワクチン製造業者は大儲けをしたようである。 しかし、ヨーロッパでもアメリカでも、ワクチンの安全性などに疑問が提出された結果、接種を拒否する人々も増え、ワクチンはだぶついているようである。これは国民の税の無駄使いであり、国民から大企業やそれを後ろ盾にした一部の科学者などへ富を移行したことになる。いわば、これらの人々による一般市民の富の強奪である。 しかも、このワクチンが本当に有効で安全ならまだしも、多くの人が、接種の結果健康を害したようである。勿論、正式な統計データは集められてはいない。その上、このような犯罪行為をあらかじめ知ってか知らずか、ワクチン接種の悪影響については、ワクチン製造業者は法律上免罪されているのである(落合:日刊ベリタ2009.10.19、10.24、12.07、12.13,12.15、12.23)。
退廃的資本主義市場経済(新自由主義と称される)が政治をも手中に納め、人々の生命をも犠牲にしてまで利潤追求をほしいままにしている姿がこの年は、戦争という面に留まらず、様々な分野で、さらに顕著にしかも全世界的規模に膨らんできたように思われる。こうした経済エリートが政治経済を、そして一般大衆の命を牛耳っている現状をどう打開するのか、人類文明はどうなるのか、難しい局面に来ている。
先に述べた国家レベル間の資源獲得競争は,もう一つの人類の直面する重大問題を象徴している。それは資源の枯渇と環境破壊とそれに伴う人類文明の破滅の可能性である。破滅ではなく、長く持続できるような文明を人類は創造しなければならない。持続可能な未来を築くための施策は今直ぐにでも始めなければならない。それは、2酸化炭素削減をも含むもっと広範な物質削減も含み、人類の倫理観・価値観の変換をも必要とする。
これに関しては、2008年度の暮れから2009年度の始めにかけて一つの案を提出した(落合,日刊ベリタ2008.11.01〜2009.01.17)。2酸化炭素削減の1事ですら、合意をうることが難しい人類に、このような大変化が期待できるであろうか。 大変化とはいえ、技術的、経済的には可能な変化であり、出来るかどうかは人類全体、特にそれを阻害するであろう経済エリート達、の意思の問題であろう。
*本稿は「バンクーバー9条の会」のサイトwww.vsa9.orgからの転載です。
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