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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2010年05月10日07時56分掲載
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政治
英国2大政党制の「崩壊」を日本の状況と結び付けられない理由とは
英国の総選挙後、2大政党の「崩壊」と日本の将来について、最近聞かれるようになった。何故聞かれるのだろう?と思い、改めてグーグルを拾ってみると、いくつかの日本の新聞で、英国の総選挙の結果、2大政党制が崩壊した・しつつあるので、「2大政党の日本も気を付けた方が良い」「留意した方がよい」(表現は若干違うのだが)として、何故か急に日本の状況とくっつけて論じていた。(ロンドン=小林恭子)
日本の2大政党制(民主党が政権を取ったことで、2大政党制が始まったとした場合)と英国の2大政党制を結び付けるのには無理がある。何しろ、日本は自民党一党体制が戦後、ほぼ一貫して続いてきた国である。かつての野党・民主党が政権を取ったばかりなのだ。今回の英国の総選挙の結果を「2大政党制度の崩壊」として、「だから2大政党は問題がある」とつなげるのは、論理的に飛躍している。「2大政党」というのを、そのまま字句通りに解釈せず、英国の場合、「与党対野党」と考えた方が良いかもしれない。「常に野党側が与党政権を倒し、次の政権を担当するかもしれない状況」だと。一党体制が長く続いていた日本とはずいぶん状況が違う。
うがった見方なのかもしれないが、英国の総選挙=2大政党の崩壊=日本の2大政党制度に言及する=日本でも一考するべきだ・・的な結論になるのは、何か裏があるように見えてしまう。2大政党を嫌う人・2大政党で不利益を被る人が裏にいるように見えてしまう。例えば、自民党あるいはその勢力下にいる人が、「やっぱり民主党はダメなんだ」と言いたいとか?私の想像だけかもしれないけれど。
英国の2大政党制が本当に崩壊してしまったのかどうかは、私自身、分からない―実際、投票した人の多くが保守党か労働党に投票している。2大政党のいずれかに投票する習慣はまだ根強く、保守党か労働党かが政権を担当するものという考えはなくなっていない。だからこそ、どの政党も過半数を取れなかった現況が衝撃なのだ。
かつて、有権者はいずれかの政党を信じて投票し、両政党は有権者の判断によって、必ずどちらかが政権を取ることを信じて疑わなかった。そんな時代は終わったのだろう。「当たり前のように交代で政権を担当する」ということ自体に、有権者は「ノー」と言ったのだと思う。
既存大手政党・政治家への「ノー」は、政治・政治家全体に対する不信感も大きいだろうと思う。丁度1年前、下院議員の灰色経費疑惑が明るみに出たのである。
保守党、労働党が過半数を取れなかった理由はほかにも様々だが、これまでに挙げられているのは、(a)労働党に関しては、金融危機を含めた経済に対する大きな不満、 (b)ブラウン首相に対する失望感、(c)3期まで続いた労働党へのあきあき感など。既存の大政党にがっかりした人が、自由民主党の若き党首ニック・クレッグ氏のテレビ討論での様子に感動した。クレッグ氏は有権者一人一人に、語りかけてくれたのだ。新鮮だった。「もう1つの道」があるように見えた。
しかし、最後に有権者が票を投じたのは、新鮮なクレッグ氏率いる自民党よりも、これまでの2大政党の保守党か労働党だった。
―自民党は何故議席がそれほど取れなかったのか?
何故自民党が不振だったのか?
この答えでまだぴんとしたものを見つけていないのだが、クレッグ氏によれば、実際に投票所に来て、投票をする段階になって「選んだのは保守党か労働党だった」という状態が起きた。保守党、あるいは労働党という大きな2つの政党に票を奪われた形となった。「クレッグは好きだけど、政策は嫌い」という見出しがついた記事が出たが、政策が嫌われた面はあるのかもしれないー例えば移民政策(不法滞在の移民にアムネスティーを与える)やEU政策(EUに積極的に関わる政策、国民の多くがEUへの不信感)、トライデントの破棄(国防政策への不安感)など。
どれほど接戦となっても最多の票を取った方が勝ちという単純小選挙区制がネックになったとも言われている。例えば、票数を数えると、保守党が約1000万票、労働党が860万票、自民党が682万票を取った。保守党が306議席取れたのであれば、自民党がその半分の150議席を取ってもよいようだが、たったの57議席なのだ。自民党が比例代表制の導入を含む選挙制度の改正を主張するのも無理はない。
今年中にまた選挙があるとして、誰が政権を担当するか分からないのが普通になりそうだ。どの政権も過半数を取らない状況が続けば、「過半数の議席を取った政党が、即政権を作る」という仕組みを変えざるを得なくなる。どんなに接戦でも票を多くとった人が当選し、負けた人の票は死に票になる現行の選挙制度も変わらざるを得ない。
政党同士が、協力して政権を作らざるを得なくなる。昨日から今日にかけて、よくメディアで聞いたのが、「今回の選挙は、有権者が政治家に対して、『よく話し合って、協力して政権を作りなさい』というメッセージを出したのだ」ということ。
まさにそういう状態が今、生じている。クレッグ自民党党首はデービッド・キャメロン保守党党首側と連立政権の可能性を話し合っている最中で、同時にブラウン首相とも今日、会合を持った。
連立政権の場合、政策の整合性はどうするのか?
これが今のところ、大きな問題となっている。中道右派保守党とリベラル左派自民党はいくつかの政策に大きな違いがある。特に自民党がこだわっているようなのが、選挙制度の改革、特に比例代表制の導入だった。保守党は現行の小選挙区制度を維持したがっている。自民党はEUと共に働くことに積極的だが、保守党はEUの英政府への影響をなるべく少なくしたいと思っている。自民党は違法滞在の外国人に一度限りのアムネスティーを与えたいとしているが、保守党はこれに反対。自民党はトライデント廃止を訴えているが、保守党はトライデント維持。
それでも、「国益のために」協力しようというのがキャメロン氏の呼びかけである。内閣の大臣職を自民党に提供する用意もあるらしい。
政策が異なる政党が連立政権を作ったらどうなるのかー?政権が分裂するか、あるいは「国益」優先で互いに妥協するのか?最大議席(306)の保守党に自民党(議席数57!)が呑み込まれしまうのではないかと自民党内では危惧がある。うまくいくかどうか?それが分かる人は誰もいない。月曜日中には何らかのめどがつくと言われている。
(英国メディアウオッチより)
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