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 | 2011年08月05日13時16分掲載
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 核・原子力原発なきアジアに向けて(下)  フクシマはアジア反原発ネットワークにつながるか  安藤丈将
 
    
     | 福島原発事故後の日本には、アジア中の、さらには世界中の注目が集まっている。日本が原発なき社会に向けた一歩を歩み出せるかどうかは、日本だけではなく、多くのアジアの人びとの関心事であることを、ノーニュークス・アジアフォーラムを通して痛感させられた。 
 ◆福島事故をアジアの教訓に!
 
 会議で討論された第二のテーマは、福島第一原発の事故をアジアの人びとの教訓にするということである。原発はそれぞれの国の状況に応じて、異なる問題を引き起こしている。たとえば、偽の地球温暖化対策という問題が挙げられる。すでに21基の原発が運転中である韓国では、「低炭素グリーン成長戦略」という名のもと、二酸化炭素の排出削減を理由にして原発が推進されている。
 原発が気候変動対策の一環として進められていることは、多くのアジア諸国に共通することであった。しかし同時に各国の参加者たちは、政府や電力会社がエネルギー需要を過剰に見積もっているが、実際には原発がなくても不便なくやっていけるという点も強調していた。
 
 地域に根ざしたエネルギーの生産のやり方を捨て、外国企業に依存するというのも、原発が引き起こしてきた問題である。すでに14基の原発が存在し、さらなる原発を開発中であるインドから来た参加者は、インドには風、潮、太陽といった自然の力から生まれるエネルギーが豊富であることを強調した。それにもかかわらず、インド政府や科学者は、アメリカを始めとする外国企業の原発技術に依存している。彼は、こうした姿勢を、西洋を猿まねする、植民地主義的な精神の現れである、と指摘した。
 
 都市と地方との間の不公正な関係というのも、原発をめぐって生まれている問題である。タイには現在のところ原発が存在しないが、全国5か所で新規の原発を建設する計画がある。そのすべてがバンコクから遠く離れた地方であり、候補地はとくに南部に集中している。最大の消費地域であるバンコクが電力を消費するために、地方が犠牲になるという関係。これは原発事故以降に多くの人びとが知るようになった東京と福島との関係を思い起こさせる。
 
 これらの問題は、地域ごとの違いこそあるけれども、参加した各国のアクティヴィストが共有できるものであった。インドからの参加者は、次のように語った。正直に言えば、放射能汚染されている日本にやってくるのは不安があった。しかし私は、日本のみなさんと原発事故に関する問題点を共有したかったので、NNAFに参加した。私たちは、日本の原発をめぐる状況が今後どうなるかに注目している。
 
 このように、福島原発事故後の日本には、アジア中の、さらには世界中の注目が集まっている。日本が原発なき社会に向けた一歩を歩み出せるかどうかは、日本だけではなく、多くのアジアの人びとの関心事であることを痛感させられた。
 
 ◆アジア大の反原発ネットワークの強化へ
 
 第三に、反原発ネットワークの強化についても議論された。アジア各国で原発が推進される一方で、各地で抗議行動も広がっている。たとえば、フィリピンでは、1977〜85年にかけて、ルソン島西部にバターン原発が建設された。しかし1984〜85年の反核ゼネストに代表される強力な抗議行動によって、コラソン・アキノ大統領は、原発を稼働させる計画を撤回するに至った。コラソンの息子で現大統領であるベニグノ・アキノ三世は、全国13か所に原発を建設することを示唆している。しかし反原発グループは、自分の母親を裏切って原発を推進したりしないようにと、ベニグノ大統領に警告を発しており、現在までのところ、この警告は有効なようである。
 
 インドネシアには、今のところ、建設&稼働中の原発は存在しない。しかし日本を含む外国の企業や金融機関の支援を受けながら、原発建設を念頭に置いたフィージビリティ・スタディが繰り返し計画されてきた。これに対して、建設候補地の現地住民は、強力な抗議行動を展開している。とくに興味深いのは、宗教者が反原発運動の中で重要な役割を果たしている点である。
 
 ムリア原発建設予定地に近い中部ジャワの地域の宗教者は、原子力をハラム(禁忌)であるとした。彼らは、イスラム教的な観点から原発に問題があると見て、抗議行動が人びとの支持を獲得するのに寄与している。このように、アジア各国の反原発運動は、現地の文化や宗教を基盤にしながら、ユニークな行動を展開し、大衆的な広がりを見せている。
 
 以上のような各国の状況を受けながら、会議ではアジア大の反原発ネットワークを強化していくことが確認された。次回のNNAFの開催に関しての討論では、フィリピン、タイ、インド、韓国の参加者が立候補した。負担の大きい主催に立候補が殺到するというのは、NNAFの歴史の中でも稀なことである。それは、まるでオリンピックの開催地をめぐる立候補を見るようだった。それほど、福島原発事故は、アジアの人びとの間に原発に対する危機感を生み出したのである。
 
 1986年のチェルノブイリの原発事故は、ヨーロッパ中に深刻な放射能汚染をもたらした。しかしそれは同時に、原発なきヨーロッパへと歩み出すきっかけにもなった。福島原発事故の悲劇は、アジア大に広がる原発ビジネスのネットワークに対して、くさびを打ち込むことにつながるのだろうか。現状は決して楽観できるものではないかもしれない。しかし各国からやって来た参加者たちの情熱には、原発なきアジアの未来を信じさせてくれる確かな力があった。
 (あんどう たけまさ、研究者)
 
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 関連記事原発なきアジアに向けて(上)ノーニュークス・アジアフォーラム(NNAF)が日本で開催される  安藤丈将
 
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   ノーニュークス・アジアフォーラムから
 
 
 
 
 
  
 
  
 
  
 
  
 
  
 
 
 
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