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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2019年11月02日21時43分掲載
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医療/健康
「健康食品で健康を害さないために」と食品安全委が警告する時代になった 上林裕子
日本経済を活性化するために、企業活動を阻害する規制をできるだけ取り払おう…2013年、内閣府規制改革会議が健康・医療分野で真っ先に取り上げたものの1つが「一般健康食品の機能性表示」だった。規制改革会議が健康食品に機能性表示が必要とした理由の一つに「消費者が購入時に製品機能に関する適切な情報を得ることができない」と消費者利便性を挙げているが、検討過程のどこにも消費者の利便性についての検討も、消費者の意見を聞いた痕跡も見当たらない。安倍信三首相が求めているのは「世界一企業が活動しやすい国」であり、「世界一消費者が暮らしやすい国」ではないからだ。こうして2015年4月に「機能性表示食品制度」がスタート、いまでは食品企業のドル箱になっている。
◆事業者責任の届け出制度
それまで、機能性を表示できる「保健機能食品」は、「特定保健用食品(トクホ)」と「栄養機能食品」の2つ。トクホは国が審査をして「機能性=健康上の効能」を認め、表示を許可しているもので、栄養機能食品は、すでに科学的根拠が確認された栄養成分を含む食品に国が定めた表示をすることができる。
これに対し機能性表示食品は、「企業が自己責任で機能性表示ができる制度」で、発売60日前までに必要な書類をそろえて消費者庁に届け出るだけでよく、書類に不備がなければ消費者庁は受理せざるをえない。提出された機能性の根拠となる書類は、消費者庁のホームページで公開されており、閲覧は可能だ。
◆トクホが×;でも機能性では〇
届け出制で安全性が確保できるのか?という消費者の不安を確信に替える出来事があった。2015年9月、安全性が確認できないとしてトクホの認証を受けられなかった蹴脂茶と同じ成分(エノキダケ抽出物)である蹴脂粒の機能性食品への登録を消費者庁が受理したのだ。このことは、届け出書類の不備や、機能性関与成分に健康被害があるなどの明らかな理由がない限り、消費者庁は届け出を拒むことはできないことを意味している。
◆しかし、トクホも疑わしい
群馬大学名誉教授の高橋久仁子氏は、国が審査を行っていたトクホでさえ効果が疑わしいものがあると指摘する。ケラセチン配糖体配合茶や高濃度カテキン配合茶などいかにも体脂肪を減らす効果がありそうに宣伝しているが「データをよくみると誤差の範囲だったりする」という。 また、健康食品の広告で「『毎日1本、のむコラーゲン しっとり、ぷるぷる、すっきり』と書いてあるコラーゲン飲料、飲んだらしっとりぷるぷる『する』とは書いていないが、飲めばお肌がしっとりプルプルすると思ってしまう」と見る人が勝手に効果を思い描くような暗示やほのめかしによって見る人がその行間を埋め、いかにも効果があると感じてしまうような表現を使っているのだ。
◆情報公開しても消費者検証はムリ
機能性表示食品制度は、消費者庁が09年から10年にかけて検討を重ねてきたいわゆる健康食品問題で指摘された虚偽・誇大広告の問題や消費者被害の問題などの解決を置き去りにしたまま制度化された。消費者がこれまで積み上げてきた議論や検討を全てなおざりにして創設された制度といえる。主婦連合会は機能性表示食品制度を「責任を事業者に、リスクを消費者に負わせる問題のある制度」と指摘、「届け出情報を公開するからといって、消費者自身が安全性と機能性を検証することはおよそ不可能」であると述べている。
実際、2016年に埼玉県のNPO「埼玉消費者被害をなくす会」がおよそ1000人を対象にアンケートを取ったところ「消費者庁のホームページで公開されている機能性として届けられた内容」を、見たことがある人は11%、見たことがない人は62%、知らなかった人は13%だった。見た人の中で「おおむね理解できた24%」「少し理解できた27%」「あまり理解できなかった16%」「ほとんど理解できない3%」。 どんなところがわかりにくかったかとの問いに対しては「何の機能かはっきりしない」「有効性の判断ができない」「グレーゾーンの解説があやしい」「ホームページだけでなく冊子などでも見られるようにしてほしい」などの意見が寄せられている。
◆減らない相談、危害
機能性表示食品制度が始まってから今年で4年目になる。制度創設に対しては賛否両論があり、「いわゆる健康食品」を淘汰することができるのではと期待する声もあった。
国民生活センターPIO-NETに寄せられた相談を見ると健康食品に関する相談は相変わらず上位を占めており、件数を見ると32、735件で前年より8%増。相談件数では「商品一般」、「デジタルコンテンツ」に次いで第3位となっている。件数が増えたのは「定期購入」に関する相談が増加したため。「定期購入」の相談とは、通販のお試し価格や「初回無料」などのサービスを利用したところ、定期購入の申し込みになっていたというもの。
身体に何らかの損害を受ける「危害情報」は「化粧品1、819件」「健康食品1、793件」「医療サービス843件」と、健康食品は相変わらず上位を占めている。年代的には20歳代以外、10歳代〜70歳代までの各年代で、健康食品は1位か2位を占めている。
◆同じ成分商品、分量100倍違う 現在、機能性表示食品の届け出数は1300を超え、事業者のビジネスチャンスを大きく広げたことは確かだ。しかし、消費者にとってどうなのだろうか。 どのような制度を作るべきか議論した消費者庁の検討会では、 (1)効果があるとした機能性成分が製品中の機能性成分と同じものかチェックする必要がある。 (2)同じ成分を使用した別々の製品を比べると全く入っていないものや多く入っているものなどその分量は100倍くらい違うことがある。 (3)有効成分を複数混合すれば効果も安全性も異なる。 (4)成分だけでなく、最終製品でチェックすることが必要ではないか、などの意見が出された。 いずれも製品の品質にかかわる重要な指摘だが対策は講じられていない。
◆食安委「食事で十分栄養摂取できる」
食品安全委員会は2015年12月、「健康食品で健康を害さないために」と題するメッセージを発表した。食安委は「現状では必要な栄養は食事で十分摂取できる」との考えをもとに、ビタミン・ミネラルなどは普通に食事をしていれば現状では補う必要がなく、場合によっては過剰摂取によって健康を害する可能性がある、と指摘している。
宣伝やCMの体験談に自分を重ね、健康食品に過剰な期待を抱いてしまいがちだが、「健康食品は薬のように品質管理や製造管理がなされたものではなく、製品によっては同じ包装の中でも関与成分の量が違う場合もありうる」「そうした健康食品の実態をきちんと見極めたうえで自分にとっての必要性を見極めて利用してほしい」と述べている。
また、「限られた条件での試験、動物や細胞を用いた実験のみでは効果の科学的根拠にはならない」と指摘しており、より確実な効果のためには最終製品によるヒト試験が欠かせないことを示唆している。
(ジャーナリスト)
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