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2021年02月01日21時23分掲載
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国際
ミャンマーでクーデター、日本政府は今度こそ民主化支援を惜しむな バイデン米政権はスーチー氏らの解放求める
ミャンマーの国軍は1日、アウンサンスーチー国家顧問兼外相らを拘束、政権を奪取した。米ホワイトハウスのサキ大統領報道官は「ミャンマーの民主主義制度への強力な支援を継続する」と表明、スーチー氏ら政権幹部の解放を軍部に求める声明を発表した。日本の加藤勝信官長官は会見で、「当事者が対話を通じて平和裏に問題を解決することが重要と考えている」と述べただけだった。日本政府はつねに日米両国は同じ価値観で結ばれていると強調しているのに、このアジアの国の民主主義の危機には足並を揃えようとしないのはなぜなのだろうか。(永井浩)
国軍は昨年11月の総選挙でスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝し、国軍系の連邦団結発展党(USDP)が惨敗したことに反発を強めていた。国軍は今年1月26日の記者会見で、投票に不正があったと主張、クーデターによる政権奪取の可能性を否定しなかった。しかし、不正を示す証拠は示されなかった。 国軍は今後、政権奪取に踏み切った理由を説明するだろうが、それを信じる国民はほとんどいないであろう。明らかな事実は、民主主義の発展をめざすアウンサンスーチー政権が誕生した2016年以後、軍は半世紀にわたる軍事独裁政権下で築き上げてきた巨大な特権と利権が少しずつ失われていくことに危機感を募らせていたことだ。
では、今回の政変に対する日米政府の対応の違いはどこから生まれるのか。一言でいえば、人権と民主主義という国際社会の普遍的な価値観への基本姿勢の違いによるものだろう。 国際社会は、ミャンマーの民主化運動が全土に拡大した1988年以降、運動の先頭に立つスーチー氏らに対する軍政の過酷な弾圧を批判し、各国政府と市民がさまざまな形で民主化を支援してきた。91年には軍政によって自宅軟禁中の彼女にノーベル平和賞が授与された。西側諸国はミャンマーへの経済援助を停止した。 だが日本政府は一貫して軍政を支持してきた。イソップ童話の「旅人とマント」のたとえ話を持ち出し、経済制裁という北風で軍政を追い込むより、経済援助という南風の恩恵をうけて軍政がおのずと強権のマントを脱ぎ棄て民主化に向かうように仕向けるのが得策と主張した。もちろん、このシナリオは失敗した。
軍政への肩入れが批判されるたびに、政府はわれわれは軍政とスーチー氏ら民主化勢力の両方にパイプをもち民主化への努力をしていると主張したが、それは真っ赤なウソだった。毎日新聞に1995年から連載されたスーチー氏のエッセイ『ビルマからの手紙』について、外務省は「日本・ミャンマー関係がこじれる。ひいては日中関係にも悪影響を及ぼす」と再三にわたって連載の中止を要請してきた。木戸湊編集局長は、「『毎日』は民主主義を大切にする新聞である」と言って、彼らの要求を突っぱねた。 日本の軍政支援の要因としてミャンマーへの日本の一部政治家らの経済利権が指摘されたが、そうだとすれば民主化よりソロバンを優先したことになる。
2012年に民政移管がなされて、ティンセイン大統領が就任するとともにスーチー氏らの政治活動が許されるようになると、米国のクリントン国務長官、オバマ大統領が相次いでミャンマーを訪問。同大統領は政治犯の釈放、言論の自由推進を約束し、西側諸国の経済制裁の解除と投資受入れが始まった。 スーチー氏が国家顧問兼外相に就任したとき初会談した岸田文雄外相は、新政権が推進する民主化や経済発展を「官民挙げて全面的に支援」していく意向を伝えた。彼女はミャンマーの長期的な経済発展に資する雇用創出や農業分野への支援に対する期待を表明した。ただ、会談後の共同記者会見でスーチー氏は、これまでの日本からの支援については、「日本国民」の気持ちを大切にしていると述べ、政府という表現は使わなかった。民主化運動に対する軍政の弾圧に国際社会が批判の声を強めるなかで、日本政府は基本的に軍政擁護の姿勢を維持してきたからであろう。
今回のクーデターに対するホワイトハウスのサキ報道官の声明は、国軍の行動が「民主制度への移行を台無しにするものだ」と懸念を表明するとともに、「われわれはミャンマー国民に味方する」と約束、事態が変わらなければ「責任ある者に対し行動を取る」と対抗措置を示唆した。また、オーストラリアのペイン外相も1日、スーチー氏らの拘束に懸念を表明し、「軍が法の支配を尊重して、合法的な仕組みを通じて紛争を解決し、違法に拘束されている文民の指導者ら全員を直ちに解放するよう求める」と訴えた。 国連のグテレス事務総長もスーチー氏らの拘束を「強く非難する」との声明を発表し、「ミャンマーの民主的改革への深刻な打撃」と批判した。
こうした海外の厳しい声を受けてかどうかはわからないが、茂木敏充外相は1日午後、午前の加藤長官よりは踏み込んだ談話を発表した。談話はクーデターに「重大な懸念」を表明、スーチー氏らの解放を求めてこう訴えた。「日本政府はミャンマーの民主化プロセスを強く支持してきており、これに逆行する動きに反対する。民主的な政治体制が早期に回復されることを改めて国軍に対し強く求める」 米国など西側諸国のミャンマー民主化支援には、この東南アジアの国をめぐる対中国戦略や経済利害もからんでいたことは否定できないものの、人権と民主主義の尊重がそれを上回っていたし、現在もそうであることは間違いない。日本政府は今度こそ、民主化支援をリップサービスに終わらせず、ミャンマー国民の信頼を勝ち得る姿勢を貫いてほしい。
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